研究実績の概要 |
今年度は、まずCDH23遺伝子の発現がヒトの神経系細胞で発達依存的に制御されているかどうか調べるために、iPS細胞、そこから分化させたneurosphere (神経幹細胞塊)、さらに分化させたneuronを用意し、real-time PCR法でCDH23 mRNAの発現を測定した。発現量は、iPS細胞 < neurosphere < neuronとなっており、発達依存的発現制御が確認された。ヒトでのCDH23遺伝子のスクリーニングは次のように行った: ① 統合失調症サンプル1,200例を用いて、MIP (Molecular Inversion Probe)法によりCDH23遺伝子の全エクソンをスクリーニング。MIP法は、原理的にはmultiplex PCRと次世代シークエンサー解析を組み合わせたものである。CDH23遺伝子の全エクソンをカバーするために、152個のMIPプローブを設計した。 ② コントロールとしては、約2,000人分の日本人ゲノムデータベースであるToMMoを参照した。 結果は、①でのスクリーニングから計71個のミスセンス多型が検出され、②との対比から、日本人統合失調症特異的多型は23個となった。23個の多型について、いろいろなアルゴリズムを用いて機能帰結を予想した。これまでの結果を総合すると、マウスでのプレパルス抑制遺伝子のquantitative trait loci (QTL)解析―全ゲノム配列解析との対照から、Cdh23遺伝子が検出され、さらにこの遺伝子を統合失調症サンプルでexon sequencingすることによって、統合失調症特異的なrare variantが複数検出された。よって、CDH23遺伝子が統合失調症の発症脆弱性に関与している可能性を得た。これらの結果を現在論文にまとめているところである。
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