研究課題
本研究では、統合失調症患者に対する経頭蓋直流刺激(transcranial direct current stimulation, tDCS)の有用性を検証する。治療効果の指標については、社会的予後・転帰を予測するとされる認知機能(神経心理バッテリーで評価)などに注目する。さらにtDCSの施行前後において、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS;光トポグラフィー)などの脳機能評価を行い、反応性の予測を試みる。本研究が目指すtDCSの客観的運用法の開発は、今までと異なる神経生物学的機序に基づく、患者の社会復帰に向けた新たな治療法の創出につながる。平成27年度に関しては、本研究報告書作成時点で17名の統合失調症患者(被験者)からデータが得られている。結果として、tDCS施行により、ベースラインと比較して言語性学習記憶(Brief Assessment of Cognition in Schizophreniaで測定)、および、社会機能的能力(金銭出納技能、コミュニケーション技能など)をロールプレイにより評価する測定尺度得点において、有意な増加が確認された。以上は、tDCSの統合失調症患者の認知機能および日常生活技能に対する改善効果を示唆すると思われた。現在被験者のリクルートをさらに進めている。今後、他の臨床指標(抑うつ症状など)への効果や、NIRSより得られる脳機能(生物学的マーカー)との関連などを検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」に記したように、被験者のリクルートは、おおむね順調なペースで進んでいる。なお、得られているNIRSデータとtDCSの臨床効果との関連については、これから検討を行う。
被験者のリクルートのペースを維持するため、引続き外来患者および入院患者の両方を対象とする。tDCS施行前後に実施する近赤外線スペクトロスコピー測定との連携を確保するため、コーディネーター業務担当者の配置を継続する。
本研究プロトコールの倫理委員会での承認時期、および連動する被検者のリクルートの開始時期が当初の予定より遅れたため。
上記利用に伴い、本研究を行う研究補助者に充てる人件費、被検者への謝金、消耗品購入費、関連学会での発表に要する旅費等の一部を次年度に繰り越す。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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