研究実績の概要 |
平成26年度は、MRI装置自体を更新する必要があったため、新規の撮像は大幅に遅れた。そのため、既存のデータの解析を優先した。 まず、既にMRI撮像と神経心理検査を終了したびまん性軸索損傷例10名、および性別・年齢を統制した健常被験者12例について、Voxel Based Morphometry法を利用し、灰白質・白質の体積低下部位を検出した。白質では脳梁に顕著な体積減少を認め、その部位については、Diffusion Tensor Imaging法を利用してFractional Anisotropy (FA)値を算出した。びまん性軸索損傷症例では、Wechsler Adult Intelligence Scale-IIIにおけるProcessing Speedの成績が健常者と比較し2SD以上の低下を認めたため、その値と脳梁体積とFA値の相関を確認すると、それぞれ相関係数0.82 (p=0.004), 0.846 (p=0.002)となり、脳梁の損傷が処理速度に強く影響していることが示唆された。 一方で、二次性ナルコレプシーをきたしたびまん性軸索損傷の一例については、ケーススタディを行った。性別・年齢をマッチさせた12例の健常者との比較では、従来ナルコレプシーの原因とされてきた視床下部の体積低下、左扁桃体、脳梁体積の低下をそれぞれ、Zスコア換算で2.56 (p=0.005), 2.70 (p=0.003), 2.21 (p=0.013)認め、一方で右の扁桃体には体積の有意差は認めなかった。また全灰白質・白質体積には有意な差が無かったことから、ナルコレプシーが脳全体の体積からすると非常に小さいこれらの領域の損傷が原因として生じていることが推測された。この結果については、既に学術雑誌に投稿し、受理されている (J Clin Sleep Med. 2015 Feb 10.)。
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