研究実績の概要 |
本研究では統合失調症などで見られる妄想を、認知的バイアスの観点からとらえ、脳領域間結合解析により、その形成基盤を明らかにすることを目的とした。平成28年度は3次元構造MRI画像、拡散テンソル画像および機能的MRI画像を用いた構造的・機能的結合性解析を行った。健常者にみられる認知的バイアスである保守性バイアスと、その異常と考えられ妄想の生成と関連すると考えられるJumping to conclusions(JTC)バイアスと構造的・機能的結合性との関係を調べた。その結果、統合失調症では基底核ネットワーク、側頭葉内側ネットワーク、およびDefault mode network(DMN)における機能的結合性の亢進が、JTCバイアスの強さと相関していることを見出した。また前部DMNの結合性亢進は、健常者では保守性バイアスと、患者ではJTCバイアスと結びついていることが明らかとなった。また、拡散テンソル画像では、健常者において、広範囲な白質における白質統合性の高さが、保守性バイアスの強さと相関していることを明らかにした。患者においてはJTCバイアスと白質統合性の相関は認めなかった。一方、3次元構造MRI画像によるVoxel-based morphometryでは、健常者・患者いずれにおいても保守性バイアス・JTCバイアスとの相関は認められなかった(Miyata et al, ICOSR 2017)。現在この成果を論文にまとめている。 これらの研究により、統合失調症における妄想形成の神経基盤を、マルチモーダルなイメージング技法を用いて明らかにすることが出来た。
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