研究課題
自閉症スペクトラム障害(ASD)患者は、重篤な社会性機能障害を呈する。ASD社会性機能障害発症には、遺伝的リスク因子に加え、環境リスク因子の寄与が大きいと指摘されている。しかし、ASD社会性機能障害をもたらす環境リスク因子については、ほとんど研究が進んでいない。研究代表者らは、これまでの研究成果に基づき、「胎生期ダイオキシン類曝露」と「ダイオキシン類への遺伝的脆弱性」の「環境x遺伝子相互作用」を通じて、ASDにおける社会性機能障害がもたらされるとの新規発症機序モデル=<ASD社会性機能障害の環境x遺伝子相互作用モデル>を着想した。本研究では、胎生期からの母子コホート研究(縦断的アプローチ)・小児ASD患児を対象とした疾患研究(横断的アプローチ)を有機的に連携させ、同モデルの妥当性を検証した。胎生期からの縦断的追跡調査は順調に推移しており、社会的に重要な視覚刺激、及び、脳性分化過程を反映した視覚刺激に対する注視反応の縦断的データを計測したほか、本研究の中心的な検討事項である化学物質環境に対する脆弱性を規定する遺伝子一塩基多型を解析し、両変数間の関連性を分析した。さらに、18カ月時には、親への質問紙調査による自閉症様行動傾向評価を実施し、収集した変数間の因果的連関解析を実施した。一方、ASD児を対象とした研究では、十分な例数が集まらなかったため、初期の成果を上げることは出来なかった。しかし、ASD診断マーカー開発を目的とした文献調査により、ASDとADHDにおける脳機能障害の側性化に関して新知見を得た。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
Frontiers in Human Neuroscienc
巻: 11 ページ: 1-16
10.3389/fnhum.2017.00137
Behavioural Brain Research
巻: 325 ページ: 173-80
https://doi.org/10.1016/j.bbr.2016.11.001