わが国では人口高齢化が進むが、統合失調症患者の高齢化も進んでいる。高齢になると統合失調症の精神症状は、陽性症状、陰性症状、抑うつ症状とも目立たなくなる。認知機能の加齢性低下は健常者と同程度だが、長期入院群では中年期以降の低下が目立つ。統合失調症患者は、健常者に比べて身体合併症が多く平均寿命は15-20年短い。一方、心理社会的には、高齢になっても対人交流を保ち生活の質・幸福感が向上するため、健常者に比べ「年齢のパラドックス」(加齢に伴う心身の機能低下と心理社会的機能とのギャップ)は大きい。 サクセスフル・エイジングの達成過程に関わると考えられる向老意識、老いに対する準備行動につき、地域生活する平均60歳の統合失調症患者57名を対象に調べたところ、統合失調症患者の向老意識は、健常者に比べ生活の自立や活動性には自信がないが、医療・福祉・経済については肯定的にとらえ、老後への準備行動は、やや乏しく、特に経済面で乏しかった。また、地域生活する60-79歳の精神障害者67名を対象に支援のニーズを調べたところ、75歳以上では、身体機能低下のため、様々な活動・プログラムよりも対人交流を楽しみ、健康に留意しグループホームの世話人を頼りにする傾向があり、支援ニーズが変化していた。 統合失調症患者は、高齢化の中で身体・精神面、社会との関わりにおいて様々な問題と向き合わなければならない。その特性に応じた適切な支援が求められよう。
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