本研究の目的は、「抗がん剤や放射線治療後の早期治療効果判定を可能とする高感度アポトーシスイメージング剤の開発」である。アポトーシスに伴い細胞表面に現れるホスファチジルセリンに親和性を有する低分子ペプチドを標的分子認識素子として選択し、放射性核種としては汎用性に優れたテクネチウム-99m(99mTc)を用いる。新たな薬剤設計として、①標的分子認識素子(ペプチド)を複数有することで多価効果により親和性を向上、②99mTc錯体とペプチドとの間にリンカーを挿入することで体内動態を制御、という2つの戦略を用いることで、既存のタンパク質を母体とする薬剤よりもアポトーシスを高感度に検出可能な新規イメージング剤の開発を目指して研究を行った。 ペプチドとしてはホスファチジルセリンに親和性を有する6残基のペプチド「LIKKPF」を選択して、多価99mTc標識体の作製を試みたが、ペプチドがリジン残基を含んでいるため、99mTc錯体の作製が困難であった。そこで、他のモデルペプチドを用いた99mTc多価ペプチドの作製を試みたところ、6価ペプチドを安定的に作製する方法を確立することができた。一方、LIKKPFはL体アミノ酸からなるため、生体内で不安定であることが報告されている。そこですべてをD体にして、アミノ酸配列を逆にした「fpkkil」ペプチドを作製し、ホスファチジルセリンに対する親和性を検討したところ、L体ペプチドLIKKPFと同様の親和性を有していることを確認した。
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