研究課題/領域番号 |
26461787
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
永田 幹紀 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (40402028)
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研究分担者 |
石田 正樹 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (10456741)
佐久間 肇 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60205797)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | MOLLI MRI / T1マップ / 細胞外液分画 / 心筋梗塞 / 線維組織 |
研究実績の概要 |
MOLLI(Modified Look-Locker Inversion Recovery)MRIは、組織のT1マップを定量的に計測することが可能であり、非侵襲的に心筋の組織性状を推測することができる。急性心筋梗塞患者においては、造影剤使用前の心筋T1マップは、心筋の浮腫の程度やその範囲を示し、造影剤使用後の心筋と血液のT1マップから心筋の細胞外容積分画(ECV)を定量的に計測することができる。 正常心筋と比較して梗塞心筋のT1マップは、梗塞領域の組織が線維による間質の多い構造へ変化するため、正常心筋よりも高い数値を示すと考えられる。この造影前の心筋T1マップ(native T1)が造影剤を用いて計測したECVと同様に心筋の組織性状の違いをどの程度検出できるか確かめるために、心筋梗塞患者30例に対し、3T装置を用いてMOLLI-MRIの撮影を行い、native T1を定量的に測定した。また、これらの組織が正常心筋か梗塞心筋かを判別するために遅延造影MRIを撮影し心筋梗塞の有無や程度の評価を行い、シネMRIを撮影し左室の局所壁運動の異常の有無や程度を評価した。その結果、梗塞領域のnative T1は1491.5±122.2 ms、非梗塞領域のnative T1は 1335.1±95.9 msであり、梗塞領域では有意に(p<0.001)大きな値を示した。native T1を用いた心筋梗塞の診断能は、ROC解析によるAUR=0.891で、カットオフ値を1420msとすると、感度75.0%、特異度88.9%であった。さらに壁内深達度50%以上の心筋梗塞の診断能は、ROC解析によるAUR=0.925で、感度92.3%、特異度86.5%であった。以上より、native T1を用いて、非造影で正常心筋と梗塞心筋の領域を精度よく区別することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MOLLI MRIにおける造影前心筋T1マップ(native T1)について、3T装置を用いた場合、native T1の値が従来報告されている1.5T装置による値よりも正確に心筋の組織性状の違いを示す結果が得られ、native T1値の検証については進行がみられた。引き続き、急性心筋梗塞患者における正常心筋と梗塞心筋、salvage areaの比較と分離についてnative T1やECVなどの解析が必要である。 急性心筋梗塞患者のデータ蓄積が予定数(50症例)に達していないため、引き続き症例の集積を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
不足分の症例の集積を継続する。 急性心筋梗塞患者において、MOLLI MRIを用いたnative T1、ECVによる評価を心筋の組織性状別に行い、それぞれの判別が可能かどうか、また、梗塞心筋の局所壁運動の機能回復予測や患者の予後について、遅延造影を用いた従来法よりも高い有効性を示すか検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
症例のデータ集積やデータ解析に用いる物品の購入は行ったが、実際のデータ解析や症例集積が予定よりも遅れているため、これにかかる費用が予定よりも少なかった。さらに、学会などへの結果発表の回数が予定よりも少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
症例の集積を継続とデータの解析を早急に行い、学会発表および論文の作成を進める。
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