研究課題
本研究は、正常及び異常胎盤の娩出前後のMRI画像と病理所見を比較検討し、胎盤機能を画像から推定し、胎児の経過・予後の推定と治療に関する画像の指標を求めることを目的とした。これまでに娩出胎盤のMRIの撮像は28例について行ったが、最終的に病理に提出された症例は17例であった。この17例について、妊娠中の撮像MR画像、娩出胎盤MR画像を評価し、病理所見、臨床所見との対応を試みた。娩出後胎盤は、T1,T2強調像3D撮像、T2mapのいずれにおいてもcotyledonの構造は確認されたが、その内部に明らかな信号変化を示す部位は認められなかった。妊娠中MRI画像は、7/17例において、Peapod sign/turtle back signが認められた。この所見は、前年度までに行った胎盤の信号強度と胎児の発育状態の関係の検討において明らかとなった胎児発育不全のある症例の胎盤で認められる規則的な低信号パターンを示す。本signの認められた7例において、上記signの認められるTE値は60-90msecであり、それより長いTEの症例はなかった。一方、上記signの認められなかった10例において、上記TE値は60-90msecが3例、90-120secが2例、180msec以上が4例であった。臨床、病理所見について、有所見であった症例は、上記signが陽性であるものが多い傾向が認められた。娩出胎盤のMRI画像は、妊娠中の胎盤MRI画像で異常信号が認められた症例であっても明らかな異常所見を指摘することは困難であった。この結果からは、妊娠中の胎盤で認められる異常所見(Peapod sign/turtle back sign)は、器質的な異常ではなく、機能的な異常を反映した所見であると推察される。TEとの関係、臨床、病理との対応については、今後更に検討し、最終報告を行う予定である。
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Placenta
巻: 35 ページ: 55-60
10.1016/j.placenta.2016.01.007.