研究課題
びまん性肝疾患において、MRIは、肝臓の形態(形状や容積)の評価や肝腫瘍の検出に加え、肝実質への脂肪や鉄の沈着などの肝実質の構造変化も評価可能である。さらに肝細胞特異性造影剤を用いると、動脈血流量や肝細胞機能(代謝や胆汁産生など)の評価も可能である。従来は、肝機能や肝線維化に関して、ある特定の画像診断法を用いて一面的に評価されることが多かったが、複数のMRI撮像法を用いて、形態や構造変化、肝細胞機能を多面的かつ総合的に融合させて診断する(以下、形態―機能融合診断)ことが、診断能の向上に結びつくと考えた。我々の目的は、肝機能や肝線維化に関して、最も信頼性の高いMRIによる総合画像診断法を確立することである。本年度は、過去に我々が検討したT1ρ計算画像に加え、T2計算画像、T1ρ/T2比を指標として用い、肝機能評価への有用性を検討した。肝腫瘍術前にMRIを撮像した患者18名を対象として、肝機能評価の指標としてインドシアニングリーン(ICG)検査を用いた。結果は、肝臓のT1ρ値とT2値は、肝機能が悪くなる(ICG値が上昇する)につれ、T1ρ値とT2値いずれも数値が高くなる傾向を示していた。ただし、いずれも統計学的には有意な相関とは言えなかった。代わりにT1ρ/T2比を用いると、同様にICG値が上昇するにつれ、T1ρ/T2比が上昇する傾向が見られ、且つ統計学的にも有意な正の相関が得られた。すなわち、T1ρ値やT2値を単独で用いるよりも、T1ρ/T2比を用いた方が肝機能評価を鋭敏に捉える事ができると考えられた。その要因として、T1ρ/T2比は、肝実質の水含有量を排除することで、肝機能悪化に伴う水含有量の変化ではなく、組織学的な変化や他の変化を捉えることができるのではないかと考えた。しかし、現時点では、評価を行う症例数が少なく、信頼性に乏しいデータである為、今後更なる検証も必要である。
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World J Gastroenterol
巻: 22 ページ: 8949-8955