研究実績の概要 |
1.冠動脈CTは虚血性心疾患の非侵襲的診断法として広く普及している。しかし、冠動脈CTは冠動脈疾患のリスクが高い群での診断精度が低く、その点が臨床的な使用において大きな問題となっていた。その主たる原因は冠動脈の高度石灰化にあることが判明している。そこで本研究では、たとえ冠動脈に高度石灰化が存在しても高い診断精度を担保できる新しい冠動脈CT法の開発を目的とした。 2.昨年度までの研究で、320列CTを用いて石灰化を除去する冠動脈サブトラクション法を開発し高い診断精度を有することを証明したが、同時に本法は30秒程度の長い呼吸停止時間が必要な欠点があることが判明した。これは、冠動脈疾患のリスクが高い患者群には長い呼吸停止が困難な高齢者が多く含まれることから、重大な課題と考えられた。 3.そこで、呼吸停止時間を短縮した冠動脈サブトラクション変法を昨年度開発したが、本年度はその診断精度を検証した。具体的には、呼吸停止可能時間が20秒未満の高度石灰化(石灰化スコア>400)を有する狭心症12例に対して本法を実施し、平均呼吸停止時間12.8秒で撮影が可能なことを確認した(Yoshioka K, et al, Acad Radiol 23:1170-1175, 2016)。 4.さらに呼吸停止可能時間が20秒未満の高度石灰化(石灰化スコア>400もしくは冠動脈ステント留置の既往)を有する狭心症11症例に対して冠動脈サブトラクション変法を実施し、その診断能を検討した。その結果、感度90.9%、特異度87.5%、陽性的中率76.9%、陰性的中率95.5%と高い診断精度を有することを確認できた(Yoshoka K, et al. Br J Radiol 89(1066): 20160489, 2016)。
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