研究課題
●MPPCを使った検出器の開発: 本研究ではLSO,YAP(Ce),ZnOなどの短発光寿命シンチレーターを用いた。MPPCの受光面に1×1×1 mm3の単結晶シンチレーターを貼り付けて遮光し,BNCコネクターを取り付けた。●X線スペクトロメーターの開発: イベントパルスを市販のMCAに入力して,Am-241から発生する59.5 keVのγ線とフォトンカウント用X線装置から発生するX線のスペクトルを測定した。試作する増幅器から発生するイベントパルスの幅は200 ns程度であった。MPPCのピクセル数は1600,400,100の3種であるため,ピクセル数によるMPPC検出器のエネルギー分解能の変化を中心に測定を行った。●小型PMTとマイクロPMTを使った検出器の開発: MPPC検出器と比較するため,これらの検出器を作製した。上述の短発光寿命シンチレーターをPMTの光電面に光学グリスで接着して固定し,遮光した。PMTから発生する負のパルスを高速ICで反転増幅した。スペクトル測定にはMCAを用い,ED-CTシステムに組み込んだ。●デュアルコンパレーターの開発: コンパレーターにはヒステリシス回路付き反転比較回路を採用し,イベントパルス波高の上下限を設定するため,高速の2chコンパレーターICとマイコンを使ってデュアルコンパレーターを構成した。コンパレーターはイベントパルス波高の下限のみを設定できる。よってエネルギーのレベルと幅を設定し,差分として演算されたカウントパルスはマイコンから出力され,カウンターカード(CC)あるいは周波数・電圧変換器(FVC)でカウントされた。●基礎研究用ED-CTシステムの開発: ED-CTシステムでは,イベントパルスをコンパレーターにより高速で弁別し, FVCでカウントする方式を採用した。検出器を精密単軸ロボットに取り付け,最高速度 300 mm/sで振動させ,プロジェクションデータを得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画にしたがって研究を遂行し,予想どおりの結果が得られ,多数の査読付き論文を執筆した。さらにエネルギー弁別CTの高速化,FVCを使った画質の改善,空間分解能の向上などに関する実験も進行中である。
今後は当初の計画に従い,27年度には以下の研究を行う。●K-エッジCTへの応用: IとGdの造影剤を希釈して3Dプリンターで作製したファントムに入れる。次いで,2chのデュアルコンパレーターを用いてエネルギーのレベルと幅を設定して撮影する。IとGdのKエッジエネルギーはそれぞれ33.2と50.2 keVであることから,Kエッジよりもわずかに高いエネルギーのX線を用いる。LSO-MPPCやYAP(Ce)-MPPCのエネルギー分解能を考慮し,I-KエッジCTでは35~50 keV,Gd-KエッジCT撮影では52~70 keVのX線を用いる。また,現有の動物ファントムを撮影し,KエッジCT撮影の効果を確かめる。●デュアルエネルギーコンパレーターの開発: 2chのデュアルコンパレーターを2個搭載した,エネルギーのレベルと幅を2領域で選択できるエネルギー弁別用コンパレーターを開発する。マイコンから出力する異なるエネルギー領域のカウントパルスはそのまま2chのFVCに入力され,カウントされる。●デュアルエネルギーCTへの応用: デュアルエネルギーCT撮影には上述のコンパレーターを用い,被写体は上記のファントムである。I-KエッジCTでは20~32 keVと35~50 keVの2領域で撮影し,画像を比較する。次に,Gd-KエッジCTでは35~49 keVと52~70 keVの領域で撮影する。デュアルエネルギーCTはエネルギー領域が大きく異なる領域でも有効であることから,30~40 keV,80~110 keVの2領域でも撮影し,エネルギーサブトラクションの効果を確かめる。
購入した物品が予想額よりも若干安価だったため
繰り越すことになった次年度使用額は小額であるため,半導体部品を購入するために使用する。翌年度分は当初の予定通り,デュアルエネルギーCTやスペクトラルCTシステムに関連するデバイスの製作,部品の購入,情報収集や成果発表のための出張旅費などにあてるつもりである。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (13件) (うちオープンアクセス 13件、 謝辞記載あり 12件、 査読あり 11件) 学会発表 (13件)
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