研究課題
●デュアルエネルギーフォトンカウンターの開発: 高速コンパレーター,マイクロコンピューターなどを用いて2つのエネルギー範囲を決定できるフォトンカウンター(3種)を作製した。●周波数・電圧変換器(FVC)の開発: 2個の積分器と電圧・電圧(V-V)増幅器からなるFVCを製作した。FVCでは,上記カウンターから出力される論理パルスを第一積分器でロングパルスに変換してパイルアップし,増幅した。次いで,第二積分器を用いて電気ノイズを除去した。FVC出力はアナログ・デジタルコンバーター(ADC)を介してパソコンに入力され,断層像が再構成される。またFVCを用いることにより,CdTe検出器を用いた場合の画像の粒状性が改善された。●クアッドエネルギーフォトンカウンターの開発: 4対のコンパレーターとマイクロコンピューターからなる4つのエネルギー範囲を選択できるフォトンカウンターを製作した。●KエッジX線CTへの応用: ヨウ素(I)とガドリニウム(Gd)の造影剤が入ったファントムを上記3種のデュアルエネルギーフォトンカウンターを用いて撮影した。IとGdのKエッジエネルギーはそれぞれ33.2と50.2 keVである。たとえば,3個のコンパレーターを使ったI-Kエッジ撮影では,20-33と33-50 keVのフォトンを使った撮影を行い,I-Kエッジを使ったエネルギーサブトラクションも行なった。●スペクトラルX線CTへの応用: クアッドエネルギーカウンターを用いてスペクトラルCT撮影を行なった。撮影で用いたエネルギー範囲は20-33,33-50,50-65,65-100 keVであった。よって,IとGdの造影剤を使ったKエッジ撮影を同時に行なうことができた。次いで,LSO-MPPC,YAP-MPPC,LSO-PMT,YAP-PMTなどの基礎研究を行い,カウントレートとエネルギー分解能の向上をはかった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画にしたがって研究を遂行し,予想どおりの結果が得られ,多数の査読つき論文を執筆した。さらにカウントレートの増加,画質の向上,撮影時間の短縮,前臨床CTスキャナーの開発を目指した実験を行なっているところである。
今後は当初の計画にほぼ従い,28年度には以下の研究を行なう。●クアッドエネルギーカウンターの改良: 27年度に試作したカウンターには各エネルギーレンジ内のフォトンをカウントするマイクロコンピューターが取り付けてある。よって,このマイクロコンピューターを高速のものと交換し,フォトンカウンターのカウントレートの向上を目指す。デジタル・アナログコンバーター(DAC)を使ったカウンターの単純・高速化も目指す。また,高カウントレート検出器,特にLSO-MPPC,YAP-MPPCなどのエネルギー分解能を向上させ,カウントレートを高める。●高速リニアスキャナーの性能向上: 平成27年度に試作した短軸ロボットを使った高速リニアスキャナーを用いて,撮影時間を短縮する。●前臨床用ED-CTスキャナーの開発: 生きている動物を撮影するためのED-CTスキャナーを構築する。動物を固定し,X線管と検出器の一対を回転する方式を採用する。最大管電圧は100 kVで,管電流は検出器のカウントレートに合わせて1 mA以下で調整される。●高速CdTeアレイの導入に関する検討: トーレック株式会社からデモ用の高速CdTeアレイ(X counter)を借用し,デュアルエネルギーCTやスペクトラルCTに関する基礎実験を行う。アレイの空間分解能とフレーム速度はそれぞれ100 μmと1 kfpsゆえ被写体の高速撮影には有用である。アレイを用いたマルチスライス撮影も検討する。
購入した物品が予想額よりも若干安価であったため。
繰り越すことになった次年度使用額は小額であるため,半導体部品を購入するために使用する。28年度分は当初の予定通り,スペクトラルX線CTスキャナーに関連するデバイスの作製,部品購入,情報収集や成果発表のための旅費にあてるつもりである。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 9件、 謝辞記載あり 12件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 4件)
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