研究課題/領域番号 |
26461808
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
村上 卓道 近畿大学, 医学部, 教授 (20252653)
|
研究分担者 |
鶴崎 正勝 近畿大学, 医学部附属病院, 准教授 (00379356)
兵頭 朋子 近畿大学, 医学部, 助教 (40403836)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | Dual energy CT / 脂肪 / ヨード / 肝生検 / 複合物質分別処理技術 |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は肝硬変に進行する可能性を有し、肝細胞癌発生のリスクが高くなる。特に肝の線維化の程度が肝細胞癌の発生リスクに関係することが知られている為、肝の脂肪沈着や線維化の早期診断や治療効果の判定は重要である。NASHを確定診断できる画像診断法は確立されておらず、肝生検が必須であるが、侵襲的な為、適応に制限がある。肝臓の線維化に関しては、線維化が進むと造影CTで用いるヨードが肝臓内の間質に入り込み、肝臓からの洗いだしが遅れることが予想され、肝臓内のヨードの定量は肝臓の線維化を間接的に評価することができると期待される。 Dual energy CT撮像から得られたデータから組織の成分を定量する技術である複合物質分別処理技術(MMD: Multi Material Decomposition)を開発し、脂肪やヨードの定量が可能かファントムおよび臨床例を用いて検討し、高い精度を実証した。これにより、体内の脂肪やヨードの濃度をMMDで計測できる可能を示すことができ、NASHに伴う肝の脂肪沈着や線維化を生検することなく定量的に診断できる非侵襲的早期肝診断システム(仮想CT肝生検)の可能性を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Dual energy CT撮像から得られたデータから組織の成分を定量する技術である複合物質分別処理技術(MMD: Multi Material Decomposition)を開発し、脂肪やヨードの定量が可能かファントムを用いて検討し、高い精度を実証した。更にMMDソフトウェアの臨床的有用性を検証するため、脂肪肝を疑われた33例の患者を対象に、MMDソフトウェア、肝脂肪評価の標準的手法であるMRスペクトロスコピー、肝組織の針生検によって評価した脂肪量を比較した。臨床診断で脂肪肝とされる5%以上の肝脂肪を検出する能力について、ROC曲線下面積は MMDにおいて0.88 (95% 信頼区間: 0.74, 0.98) であり、MRスペクトロスコピー(0.89 [95% 信頼区間: 0.724, 1]) に匹敵する精度であった。これにより、体内の脂肪やヨードの濃度をMMDで計測できる可能を示すことができ、NASHに伴う肝の脂肪沈着や線維化を生検することなく定量的に診断できる非侵襲的早期肝診断システム(仮想CT肝生検)の可能性を示した。 従来のCTによる脂肪量の推定は造影CTでは難しいが、MMDソフトウェアには造影後のCTからヨード成分を差分して(仮想単純CT)脂肪を定量する手順が組まれており、仮想単純CTによる代替性が明らかになれば、真の単純CTを省略することで、患者のX線被ばくの減量が期待できる。その精度を臨床例で検証したところ、仮想単純CTと真の単純CTとの測定値の誤差1%以下(最小可検誤差)と高い一致性を確認できた。 これらの成果は学術論文にまとめ、それぞれ海外雑誌に投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、肝内線維化を評価するため、Dual energy CTによるdynamic studyのデータを用いて各相での肝実質のヨード定量を行い、そのデータから肝の線維化評価に対する正確性や有用性を検討している。今後臨床例を積み重ねてデータを収集していく。日常診療として行われるdynamic studyのデータを用い、肝線維化の程度が推測できれば、慢性肝疾患の治療効果判定としての侵襲的な肝生検にかわる指標となることが期待される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際学会への参加に関して、招待講演により費用が予想より押さえられたため。 購入予定のファントム実験が次年度に延期になったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度、国際学会への参加に利用する。 延期していたファントム実験を今年度行う。
|