研究課題/領域番号 |
26461813
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
兵藤 一行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (60201729)
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研究分担者 |
松下 昌之助 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (70359579)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射光単色X線 / 微小血管造影 / X線イメージング / 空間分解能 / 濃度分解能 / X線光学素子 / X線検出器 / 造影剤 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続いて、新しいX線イメージング用蛍光体を装着したHARP検出器、既存のX線CCD検出器、PILATUS検出器により、X線エネルギー 33keVの放射光単色X線を用いて微小血管造影システムに関する各種評価実験を実施した。今年度は、放射光利用可能時間が大変限られていたが、得られるX線画像の空間分解能、濃度分解能、時間分解能について、単色X線を利用する放射光ビームラインの特性(電子ビームのエミッタンス、電子ビーム形状、放射光スペクトル、放射光の発光点と試料設置場所間の距離、単色X線を得るためのX線光学素子の物理的特性、大きな照射面積を得るために利用する非対称反射X線光学素子の物理的特性)を考慮しながら、より詳細な定量的評価を実施することができた。縦偏光放射光が得られる放射光科学研究施設の放射光ビームラインBL―14では、X線光学素子によるX線の角度分解を実施しない軸方向でも、電子ビーム形状の特性(放射光の発光点の大きさ)により、現在利用しているX線イメージングシステムについて、いわゆる半陰影による空間分解能の劣化が生じないことを定量的に評価できた。 上記知見を利用しながら、今年度も小動物を用いた血管造影検査を個々の医学的目的に対応して各種血管系(冠動脈系、肺血管系、腫瘍血管系など)に関して実施し、医学的見地からの評価を行った。特に、HARP検出器を用いた肺血管系血流の定量的評価により、肺血管系に関する新しい知見、肺がんの早期発見に関する知見を得ることができた。 以上の研究成果は国内外の学術集会や学術論文として報告するとともに、一部の研究成果(肺がんの早期発見に関する知見)については新聞報道もなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
放射光単色X線を用いた微小血管造影システムに関する各種評価実験は、評価実験を主に実施することを予定していた放射光ビームラインが設置されている放射光科学研究施設内放射光用加速器への新しい電子ビーム輸送路建設のための長期加速器運転停止、さらに放射光科学研究施設内の別放射光用加速器に設置されたX線イメージング用放射光ビームラインの光源故障により、十分な放射光利用実験時間の確保ができなかった。ただ、その状況でも複数回の放射光利用実験により、有用な情報を得ることができ、また得られた画像データの解析を進めることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
新年度は、評価実験実施を検討してきた放射光ビームラインでの実験が可能となる予定であり、現在までに利用してきたX線イメージング用検出器以外のX線検出器を用いた評価実験を含め、具体的な個々の医学的目的に対応した小動物を用いた各種血管系(冠動脈系、肺血管系、腫瘍血管系など)の評価実験を実施して微小血管造影システムに関する更なる知見の蓄積を行う予定である。また更に、本微小血管造影システムの開発で得られた知見を、放射光の産業応用の視点も含めて広く社会に還元できる方法についても検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
放射光単色X線を用いた微小血管造影システムに関する各種評価実験は、評価実験を主に実施することを予定していた放射光ビームラインが設置されている放射光科学研究施設内放射光用加速器への新しい電子ビーム輸送路建設のための長期加速器運転停止、さらに放射光科学研究施設内の別放射光用加速器に設置されたX線イメージング用放射光ビームラインの光源故障により、十分な放射光利用実験時間の確保ができなかった。経費の有効利用を考慮して、次年度使用とさせていただいた。
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次年度使用額の使用計画 |
現在までに利用してきたX線イメージング用検出器以外のX線検出器を用いた微小血管造影システムの物理的特性に関する評価実験を含め、具体的な個々の医学的目的に対応した小動物を用いた各種血管系(冠動脈系、肺血管系、腫瘍血管系など)の評価実験を実施して微小血管造影システムに関する更なる知見の蓄積を行う予定である。このための画質評価用ファントーム、動画像保存用ディスク、画像処理ソフトウェア等に使用する予定である。また得られた研究成果に関して、今後の研究方向についての放射光科学、医学物理、医学の専門家等との研究打ち合わせ、学会等での成果報告に使用する予定である。
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