前年度に引き続いて、新しいX線イメージング用蛍光体を装着したHARP検出器、X線CCD検出器により、X線エネルギーが33keVから35keVの放射光単色X線を用いて微小血管造影システムに関する各種評価実験を実施した。この評価実験は、縦偏光放射光が得られる放射光科学研究施設のPF放射光ビームラインBLー14および表面を研磨したX線光学素子を用いてX線強度のより大きな単色X線を得ることができるPF―AR放射光ビームラインNE7において実施し、それぞれの放射光ビームラインの物理的特性を活かした微小血管造影システムに関する物理的評価、小動物を用いた医学的評価を、医学的見地から設定した目的別に実施した。PF放射光ビームラインBLー14では、より空間分解能の高い画像を得ることができ、PF―AR放射光ビームラインNE7では血管系の動画像診断が可能である。肺がんに関する研究では、HARP検出器の高濃度分解能、高時間分解能である特性を利用することで血管内循環により濃度が薄くなった血管造影剤でも識別できるので、X線画像上での評価対象部位の血管造影剤濃度の時系列的な変化を解析することにより、肺がんの部位特定、肺がんの早期診断に繋がる知見を得ることができた。肺動脈性肺高血圧症に関する研究では、血管径50μm程度の血管系を識別できることから、細動脈の狭窄度評価、対象部位の流速計測、静脈相への遅延時間など、疾患の機序解明に関する知見が得られるであろうことを示すことができた。腎機能に関する研究では、糸球体レベルでの機能評価に繋がる知見を得ることができた。
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