研究課題/領域番号 |
26461816
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研究機関 | 滋賀県立成人病センター(研究所) |
研究代表者 |
加川 信也 滋賀県立成人病センター(研究所), 画像研究部門, 主任研究員 (10393191)
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研究分担者 |
山内 浩 滋賀県立成人病センター(研究所), 画像研究部門, 副所長 (40360812)
東 達也 滋賀県立成人病センター(研究所), 画像研究部門, 総括研究員 (50324629)
西井 龍一 宮崎大学, 医学部, 講師 (60463212)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Benzyl [18F]FACE / フルオロ酢酸 / 脳虚血 / 虚血性脳血管障害 / PET / [18F]FACE / 分子イメージング |
研究実績の概要 |
これまでに我々は、Acetateをフッ素標識したPET診断薬[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)に着目し、臨床応用へ向けてtwo-pot蒸留法や新規に開発した合成法であるone-pot蒸留法の合成検討、及びラット脳虚血-再灌流モデルにおいて[18F]FACEの取り込みとグリア細胞との関係について検討してきた。神経-グリア間の代謝シフトが関係している可能性があり、新たな知見を生む可能性がある。本研究では、虚血性脳血管障害を判別可能にする画像診断の開発を目指し、脳への移行性を高めた[18F]FACEの誘導体を世界初の薬剤として合成し、従来の15O-ガスを用いた脳PET検査とは異なる新たな脳イメージング法の開発を行う。 平成26年度は、[18F]FACE誘導体として、Benzyl [18F]Fluoroacetate (Benzyl [18F]FACE) の合成及び製剤化の検討を行った。JFEエンジニアリング社製のカセット式多目的合成装置を用い、前駆体Benzyl Bromoacetateをアセトニトリルに溶解してK[18F]/Kryptofix 2.2.2を用いてフッ素化反応を行なった後、HPLCにて分離精製を行った。最終製剤化工程には、逆相カラムを用いた固相抽出によって得られたBenzyl [18F]FACEを含むエタノールを蒸留水で希釈する方法で行った。さらに、ポジトロン核医学専門委員会が成熟薬剤として認定した放射性薬剤基準(2009年改定)を参考として、品質検定項目(放射化学的純度・比放射能・残留有機溶媒等)を行った結果、問題のないことを確認し、Benzyl [18F]FACEの臨床での合成法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
標品であるBenzyl Fluoroacetateを効率よく合成した。更に、Benzyl [18F]FACEの合成は、JFEエンジニアリング社製のカセット式多目的合成装置を用い、前駆体Benzyl Bromoacetateをアセトニトリルに溶解してK[18F]/Kryptofix 2.2.2を用いてフッ素化反応を行なった後、HPLCにて分離精製を行った。最終製剤化工程には、逆相カラムを用いた固相抽出によって得られたBenzyl [18F]FACEを含むエタノールを蒸留水で希釈する方法で行った。その結果、Benzyl [18F]FACEの合成は、放射能:16.6 ± 3.9 GBq、合成時間:49.2 ± 0.3分、比放射能:191.0 ± 65.3 GBq/μmol、収率:55.7 ± 5.5%、放射化学的純度:98.4 ± 1.4%であった。さらに、放射性薬剤基準を参考として、[Benzyl [18F]FACE薬剤の品質検定(放射化学的純度・比放射能・残留有機溶媒等)を行なった結果、問題のないことを確認した。 その結果、すぐに臨床可能な合成及び検定法を十分に確立し、平成27年度だけでなく28年度の一部計画していた内容を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
最終の製剤化行程(HPLC分離以降)は、現在確立した固相抽出によって得られた[18F]Benzyl FACEを含むエタノール(EtOH)を蒸留水で希釈する方法だけでなく、新規に開発した合成法の確立にも挑戦する。具体的には、HPLCによる分離を使わない方法であり、より簡便な合成が可能で臨床使用に有望な画期的な手法である。 また、前臨床段階として、ラットを用いその有用性を検討するため、イソフルレン麻酔下にて中大脳動脈の一過性脳虚血/再灌流障害(transient MCAO)モデルラット(虚血時間60分間)を作製し、拡散強調MRI、灌流MRI画像により当該中大脳動脈域の虚血を確認する。再灌流2時間後および再灌流7日後に[18F]Benzyl FACE(150 MBq/kg, i.v.)を投与し、60分間のPET撮像を行なう。また、同時期にTTC染色も行い、梗塞巣を確認し、虚血性脳血管障害を判別可能にする画像診断法の開発を目指す。 更には、Benzyl [18F]FACE以外の[18F]FACE誘導体も合成し、虚血性脳血管障害を判別可能にする新たな画像診断ツールの開発を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画予定であった自動合成装置用製剤化ユニットについては、予算不足のため購入を見合わせた。更に、画像解析用PC及び解析専用ソフトウェアについては、来年度以降に購入予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
臨床応用に向けた前駆体大量合成及び放射性18F標識体合成のため、出発原料等の試薬、分離・標識合成用カラム、18O安定同位体標識水等の試薬・消耗品が絶対条件である。放射性薬剤の標識・分離・精製に必須なHPLCカラム等は高価である。新規合成された薬剤は前臨床段階として、ラットを用いその有用性を検討する。PETダイナミックスキャン及び全身像を撮像するための費用が必要である。さらに画像診断解析法確立には、膨大な画像データの処理・解析のための特殊なソフトウェアを搭載したコンピュータ機器の設置が必須であり重要である。
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