研究課題/領域番号 |
26461825
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上野 智弘 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10379034)
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研究分担者 |
杉本 直三 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20196752)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核磁気共鳴映像法 / 非アルコール性脂肪肝 |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝炎に進行する進行性のものと非進行性のものに分けられる。進行性のものは、最終的には肝硬変や肝ガンへと進行すると考えられている。食生活の変化に伴い高脂肪食の比率が高まり、非アルコール性脂肪肝疾患の罹患率が上がり、B型肝炎やC型肝炎以外の肝硬変や肝ガンの大きな要因と認識されている。本年度においては、ヒトの非アルコール性脂肪肝疾患群のモデルとなるメダカの作成を行った。kyoto cabと呼ばれる野生型の近交系のメダカにおいて、高脂肪食餌を1日3回与えた群と、通常食餌を1日2回与えた比較群を用意した。高脂肪食餌の投与期間は16週間である。2つの群のヘマトキシリン・エオシン染色とアザン染色の2種類の染色を行った肝臓切片を比較すると、高脂肪食餌群の肝臓の脂肪割合が優位に上昇していることが分かった。これにより、野生型の近交系のメダカにおいて、非アルコール性脂肪肝疾患群のモデルが作成できていることが確認された。さらに、2つの群をMR顕微鏡によって撮像し、肝臓における脂肪割合をMR画像から求めた。このとき、3ポイントディクソン法と呼ばれる3つの異なるエコー時間を用いたMR画像を撮像する方法によって、脂肪割合を求める基礎となるMR画像を撮像した。3ポイントディクソン法によって得られたMR画像を、核磁気共鳴における化学シフトの違いを用いて、1画素ごとに独立に脂肪含有量と水含有量に分離する手法により、脂肪画像と水画像に再構成した。この2種類の画像から脂肪割合を求めた。この脂肪割合は、脂肪肝のバイオマーカーとして、近年認識されてきている。また、グラディエントエコーを用いて撮像の高速化を図り、メダカの麻酔の条件を最適化することで、in vivoイメージングの手法を確立し、疾患モデルのMR顕微鏡による経時観察を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、高脂肪食餌の投与によって非アルコール性脂肪肝を発症しているメダカの作成を達成している。また、ヒトの指針ではあるが、非アルコール性脂肪肝炎の臨床的研究におけるネットワークによる指標付けシステム(NASH Clinical Research Network Scoring System)を用いた肝臓の切片画像の解析では、高脂肪食餌の投与期間が長いもので非アルコール性脂肪肝炎の発症の可能性を示唆するものがあった。しかし、肝硬変や肝ガンへの移行は見られていない。 MR顕微鏡において、ヒト疾患モデル(非アルコール性脂肪肝疾患群)のメダカに対して、in vivoイメージングの条件の最適化を図り、in vivoイメージングを可能とした。さらには、ヒト疾患モデルの経時観察を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に達成したMR顕微鏡におけるメダカのヒト疾患モデルのin vivoイメージングと病態の経時観察の手法を用いて、ヒト疾患モデルでの定量的イメージングを行っていく。定量的イメージングとしては、定量的磁化率マッピング(Quantitative Susceptibility Mapping)を用いた磁化率、また、T2やT2*を定量的に計測し分布を求めることを目指す。このとき、定量的磁化率マッピングにおける解像度の向上を示唆する手法を開発しており、その手法の適応を目指す。現在は、我々の定量的磁化率マッピングの手法は、シミュレーション実験での解像度の向上の結果に留まっている。そこで、磁化率の異なる様々な大きさの構造物によるファントムを作成し、ファントムのMR画像を用いて、我々の定量的磁化率マッピングの手法の高解像度化の結果を検証する。その後、MR顕微鏡におけるメダカのヒト疾患モデルに用いる。また、T2やT2*に関しては、ゴールデンスタンダードのカー・パーセル法を用いてその分布を定量的に求める。こうして得られた定量的マッピングと病態の進行との相関を画像解析により求め、バイオマーカーの探索を行っていく。 ヒト疾患モデルとしては、発ガンのモデルとして、ガン抑制遺伝子であるp53を変異させたメダカを用いる。また、メダカの非アルコール性脂肪肝疾患群のモデルにおける発ガンの可能性についても検討を行っていく。これは、今年度において作成されたメダカの非アルコール性脂肪肝疾患群のモデルでの肝ガンや肝硬変への進行が確認できなかったことによる。また、神経変性疾患のモデルのメダカ等についても検討を行う。
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