研究課題/領域番号 |
26461827
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
栂尾 理 九州大学, 大学病院, 助教 (10452749)
|
研究分担者 |
樋渡 昭雄 九州大学, 大学病院, 助教 (30444855)
吉浦 敬 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40322747)
山下 孝二 九州大学, 大学病院, 助教 (80546565)
本田 浩 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90145433)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | CESTイメージング / 分子イメージング / MRI / 脳腫瘍 / 神経膠腫 |
研究実績の概要 |
本年度は脳腫瘍のAPTイメージングにおける最適な画像パラメータを検討した。まず卵白を用いたファントムを作成し、APTイメージングの飽和パルスの持続時間と得られるCEST効果との関係を調べた。10%, 20%, 50%, 100%の卵白で満たしたファントムを飽和パルスの持続時間を0.2s-3.0sまで変化させながら撮像した。いずれの濃度においても、持続時間が長い方がCEST効果は向上したが、特に2.0秒以上で高いCEST効果が観察された。飽和パルスの印加にはParallel transmission systemを用いた。 次に神経膠腫患者において飽和パルスの持続時間を0.5s, 1.0s, 2.0sと変化させてCEST効果を測定した。9名の低悪性度神経膠腫、13名の高悪性度神経膠腫においてAPT信号を測定したところ、いずれの患者においても2.0sの飽和パルスで正常と病変部との間のAPT信号のコントラストが最大となった。よってこれらの結果から長い飽和パルスが脳腫瘍のAPTイメージングに最適であることが明らかとなった。 次にAPTイメージングの臨床使用における再現性を検討した。脳腫瘍患者の術前検査においてscan-rescan撮像を行い、得られた腫瘍部のAPT信号の平均値と90パーセンタイル値を測定したところ、2回の撮像に置いて高い一致率が得られた。これらはParallel transmission systemを用いたAPTイメージングにおいて飽和パルスの空間的均一性が高く、またB0不均一性が正しく補正できていることを表している。 これらのファントム、患者での検討から、Parallel transmission systemを用いたAPTイメージングでは長い飽和パルスが有用であり、本手法は再現性の高い画像法と考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった脳腫瘍におけるAPTイメージングの撮像パラメータの最適化を行え、臨床使用における再現性を確認することができたため、概ね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
1) 神経膠腫患者の病理学的悪性度の予測能の評価 手術の施行されるびまん性神経膠腫(WHO Grade II-IV)患者約40例を対象とし、APTイメージングが腫瘍の組織学的悪性度を予測できるかどうかを検証する。神経膠腫のWHOグレード別にAPT信号の比較を行い、悪性度との相関関係を調べる。次に細胞分裂期にある腫瘍細胞を染色するためのKi67染色を行い、細胞増殖能とAPT信号の比較を行う。これらによりAPTイメージングの病理学的悪性度の予測における有用性を検証する。APTイメージングと拡散強調画像、灌流画像、MRスペクトロスコピーなどの他のMR撮像法と悪性度診断能についての比較を行う。 2)脳腫瘍の治療効果判定における有用性 神経膠腫の放射線化学療法後にガドリニウム増強効果を示さない再発あるいは真の腫瘍増大を伴わない画像上の増強域の増悪(Pseudo-progression)を認めることもあり、増強効果のみで治療効果を判定することは容易ではない。増強効果は主に血液脳関門の破綻を反映しているが、APTイメージングは腫瘍細胞のタンパク/ペプチドを見ており、より直接的に治療効果を評価が期待できる。放射線治療とテモゾロミド併用治療を行う高悪性度神経膠腫(Grade III, IV)約40名を対象とし、治療前、治療開始後6週間、その後1コースごとにAPTイメージングを撮像する。初期のAPT信号が腫瘍再発を予測できるか、経過のAPT信号が腫瘍再発を正しく診断できるかどうかについて経過および他の画像所見との比較を行いながら検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度に画像解析のためのソフトウェアの購入を考えているため
|
次年度使用額の使用計画 |
画像解析のためのソフトウェア(Matlab)の購入
|