研究課題/領域番号 |
26461827
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
栂尾 理 九州大学, 大学病院, 助教 (10452749)
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研究分担者 |
樋渡 昭雄 九州大学, 大学病院, 助教 (30444855)
吉浦 敬 鹿児島大学, 医学部, 教授 (40322747)
山下 孝二 九州大学, 大学病院, 助教 (80546565)
本田 浩 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90145433)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CESTイメージング / APTイメージング / 分子イメージング / MRI / 脳腫瘍 / 神経膠腫3)脳腫瘍の治療効果判定における有用性 |
研究実績の概要 |
1) 神経膠腫患者の病理学的悪性度の予測能の評価 神経膠腫の悪性度評価において様々な撮像法の有用性が報告されているが、確立してはいない。今回われわれはびまん性神経膠腫(WHO Grade II-IV)の術前患者のうち、ガドリニウム造影剤による増強効果の乏しかった患者34例を対象とし、APTイメージングが腫瘍の組織学的悪性度を反映するかどうかの検証を行い、拡散強調画像から求められるADC値および灌流画像から求められる脳血液量との診断能の比較を行った。腫瘍のAPTの平均値および90パーセンタイル値共に高悪性度群(WHO Grade III-IV)の方が低悪性度群(WHO Grade II)よりも有意に高い値そ示した。ROC解析ではAPT平均値、90パーセンタイル値ともに両群の鑑別能は中等度であった。一方ADC値および脳血液量値は鑑別に有用ではなかった。この結果から従来の撮像法では正確な悪性度評価ができなかった症例におけるAPTイメージングの有用性が明らかとなった。 2)脳腫瘍の治療効果判定における有用性 神経膠腫の放射線化学療法後のモニターの一般的な指標としては通常ガドリニウム増強効果が用いられているが、増強効果を示さない再発あるいは真の腫瘍増大を伴わない画像上の増強域の増悪(Pseudo-progression)を認めることもあり、増強効果のみで治療効果を判定することは容易ではない。増強効果は腫瘍そのものでなく血液脳関門の破綻を反映しているが、APTイメージングは腫瘍細胞のタンパク/ペプチドを見ており、より直接的に治療効果を評価が期待できる。現在膠芽腫の放射線化学療法後の患者にAPTイメージングを撮像し、治療効果の判定における有用性を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に行ったAPTイメージング撮像法のパラメータ調整を行ったのち、本年度は神経膠腫の患者における撮像を行った。当初の目的であったAPTイメージングによる悪性度評価について上記のとおりのまとまったデータが得られ、APTイメージングの臨床的有用性を証明することができた。ただし治療効果の判定については十分な患者数が集まっていないため、少し計画に遅れがでている。
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今後の研究の推進方策 |
1) 本年度に引き続き、脳腫瘍の治療効果判定における有用性について検討する。具体的には放射線治療とテモゾロミド併用治療を行う高悪性度神経膠腫(Grade III, IV)約40名を対象とし、治療前、治療開始後6週間、その後1コースごとにAPTイメージングを撮像する。初期のAPT信号が腫瘍再発を予測できるか、経過のAPT信号が腫瘍再発を正しく診断できるかどうかについて経過および他の画像所見との比較を行いながら検証する。 2)ハイブリッドPET/MRシステムを用いた集学的診断法の確立 九州大学病院では平成25年度中にハイブリッドPET/MRシステムが導入され、平成26年度より本格的な運用が開始される。PET/MRはMRIの濃度分解能の高さをPET画像に反映することにより、レジストレーションや定量精度の向上が期待されている。本研究ではCESTイメージングをPET/MRに組み込むことにより、MRIによる形態のイメージングのみならず、分子レベルでのマルチモダルイメージングが可能となる。具体的には上記目的2),3)の神経膠腫の悪性度評価や治療後の効果判定においてCESTイメージングとPET各種トレーサー(18F-FDG、11C-Methionine)とを組み合わせることで診断能が向上するかどうかについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析ソフトMatlab tool boxの一つが不要であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内出張費に使用予定
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