研究実績の概要 |
今年度はAPTイメージングの臨床応用に向けてさらなるシークエンスの開発を行った。従来は2Dのシングルスライスのみの撮像であったが、今回開発した3D APT-Dixon法ではマルチスライスの撮像を可能としており、さらにDixon法による内因性のB0補正を組み込んでいる。この手法を脳腫瘍患者にて撮像し、従来の2D APTイメージングとの定量性の比較を行った。22人の脳腫瘍患者(54.2±18.7歳、男性12名、女性10名)にて3D APT-Dixon法と2D APTの両者を撮像した。3D APT-Dixonでは ±3.1 ppm, ±3.5 ppm, ±3.9 ppm, -1560 ppmの周波数にて撮像し、+3.5ppmではエコーシフトを変えて3回撮像し内因性のDixon B0マップを作成した。3D APTをDixon B0マップで補正したもの(3D-Dixon)、別個に撮像したB0で補正したもの(3D-Separate)、補正しなかったもの(3D-uncorrected)の3通りを作成し、2D-APTと比較した。結果として、腫瘍のAPT強調信号の平均値では3D-Dixonは2D-APTと高い一致率(ICC=0.964)と高い相関(r=0.93, P<0.0001)を示した。APT強調信号の90パーセンタイル値も高い一致率(ICC=0.972)と高い相関(r=0.95, P<0.0001)を示した。3D-Dixonの一致率や相関は3D-Separateや3D-uncorrectedよりも高いものであった。これらの結果から、内因性B0マップによる3D-Dixonは高い定量性を有していることが明らかとなった。さらにマルチスライス撮像は臨床使用における有用性が高いと考えられた。
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