研究課題/領域番号 |
26461832
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
篠原 廣行 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 名誉教授 (90138488)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | MRI / compressed sensing / image reconstruction / wavelet transform / total variation |
研究実績の概要 |
McGill 大学Brain Web MRIデータベースの頭部T1,T2,PD画像(256×256画素)を原画像とし,直線サンプリング数(bin 数): 256,角度サンプリング数 (view 数)は標本化定理を満たすview数402の投影データを作成した.この再構成画像を参照画像とした. 圧縮センシングMRI (CS-MRI) 模擬データとしてview 数64(収集率R = 0.16) , 80(R = 0.20)の投影データを作成した.画像再構成は,1) 共役勾配法,2) 代数的方法(ART法)の2種類で行い,スパースファイ変換に前者はウエーブレット変換とTotal variation (TV) ,後者はTVを用いた(ART_TV法).共役勾配法では正則化なし(None),ウエーブレット変換(WA),TV(TV),ウエーブレット変換+TV(WA+TV)の3種類の正則化を試行した.白質,灰白質,脳脊髄液の二値化画像を用い再構成画像のそれら領域を抽出し原画像を基準にRMSEを求めた. 標本化定理を満たす画像のRMSEは1.69%,白質,灰白質,脳脊髄液のRMSEはそれぞれ0.58,0.96,1.69%であった.R = 0.20の画像の RMSEは3.92%,白質,灰白質,脳脊髄液のRMSEはそれぞれ2.11,3.77,7.27%であり,R = 0.16の画像のRMSEは5.77%,白質,灰白質,脳脊髄液のRMSEはそれぞれ2.93,5.27,10.3%であった.ART_TV法のRMSEは,若干,共役勾配法のRMSEよりも低い傾向を示した.データ収集率 R = 0.20 において正則化にTVを用いたRMSEが画像全体及び領域ごとで最小値を示し, T1,T2強調画像で7~8.5%,PD強調画像で3%程度であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
圧縮センシングMRI(CS-MRI)の画質評価法には信号対雑音比 (SNR) が一般に用いられる.対象画像は,T1強調画像あるいはT2強調画像が多く,同一断面についてT1,T2,プロトン密度(PD)強調画像の3種類についての報告は見当たらない.また,白質,灰白質,脳脊髄液の3領域を関心領域(ROI)とした定量性の報告もなく,CS-MRIが組織の萎縮や変性の早期検出に応用可能かは未知である.本研究では,計算機シミュレーション実験によって,頭部画像全体及び白質,灰白質,脳脊髄液の3領域の平方根二乗誤差(RMSE)を求めCS-MRIの定量性を検討した.本研究で明らかになったCS-MRIの定量性は組織の萎縮や変性を評価する際の基礎データとして役立つと期待される. 2次元ラジアルスキャンMRIの画像再構成法として,1) 代数的方法を用いたTV最小化法,2) 共役勾配法をこれまで実装し,2) についてはスパースファイ変換にウエーブレット変換,TVそれぞれ単独に用いた場合と両方を用いた場合を実験できるようにした.また,直交座標を用いた2次元フーリエ変換MRI及び3次元フーリエ変換MRIの画像再構成法として,上記に加えProjection onto convex sets (POCS) 法を実装した.これまで,収集率をR = 0.3程度にすることに研究の中心を置いていたため,動き補正アルゴリズムをMRI逐次近似法に組み入れる検討が後回しになっている.
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今後の研究の推進方策 |
圧縮センシングの収集率を R = 0.5にし2次元ラジアルスキャンMRIの画像再構成法に動き補正アルゴリズムを組み込み,数値シミュレーション実験を行う.また,ISTA (iterative shrinkage-thresholding algorithm),Fast ISTA (FISTA),FCSAなど,より演算速度の速い最適化アルゴリズムを研究に取り入れるためこれらの実装を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
頭部のT1強調画像,T2強調画像,プロトン密度強調画像を圧縮センシングの原画像とするとき,圧縮センシングの収集率は R = 0.5程度で問題ないことに気づくのに時間がかかり,C言語プログラムをMatlabに書き換える段階に至らなかった.そのため,Matlab購入用とした予算を執行できなかった.論文投稿をH27年度に予定したが,原稿の作成が遅れ英文校正費用を執行できなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
28年度もC言語主体でプログラム開発を進めるが,Matlabが不可欠になった段第で購入する予定にしている.論文投稿用に計算機シミュレーションデータが整った段階で英文校正費用を執行する.
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