研究課題/領域番号 |
26461833
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西尾福 英之 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80458041)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノDDS / ミセル化ナノ粒子 / 動注療法 |
研究実績の概要 |
当初ラットのみでナノDDS粒子の動注療法を実施するにあたり、カテーテル技術の影響をできるだけ低くするために、ラットよりも大きな動物であるウサギで実施することとした。以下にその実験概要とその結果を報告する。 ニュージーランドウサギにVX2腫瘍を肝左葉に開腹下で直視下に移植した。2~3週間後に腫瘍が成長していることを超音波で確認した後、対象ウサギとした。合計18匹を準備した上で、動注群(9匹)と静注群(9匹)に分けた。ナノDDSはSN-38をミセル化した粒子を用いて、投与量は30mg/kgとした。 動注群は、右鼠径部を切開して右大腿動脈を露出させ、4Frのイントロデューサーを挿入し、4Frホッケー型カテーテルで腹腔動脈を選択し、さらに1.7Frのマイクロカテーテルで超選択的に左肝動脈に挿入した。その血管から抗がん剤を5分間かけてゆっくりと注入した。創部は、止血・縫合して終了とした。静注群は、右鼠径部を切開して右大腿静脈を露出させ、23G翼状針を挿入して5分間かけてゆっくり注入した。同様に止血・縫合して終了とした。測定方法としては、末梢血を耳介動脈から採取した。時間は3分、30分、1時間、2時間、24時間後に採取した。腫瘍は、3分、2時間、24時間後にウサギを犠牲死させて、肝臓・腫瘍を摘出してSN-38, free SN-38を測定した。結果は、0~24時間のAUCは動注群、静注群で有意な差はなかった。腫瘍内濃度を比較すると、3分、2時間、24時間のいずれにおいても動注群が静注群に比べて有意に高値を示した。また、腫瘍のHE染色で壊死率を確認すると24時間後において動注群が静注群と比べて壊死率が高い傾向にあった。さらに、アポトーシスの変化をTUNEL染色で確認したところ、動注群では2時間後にすでにアポトーシスが誘導されていることが確認できた。これらの結果をもって、ミセル化ナノDDS粒子の動注療法は静注療法に比べて有効であることが証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍濃度の測定を行うにあたり、カテーテル技術による影響をできるだけ低くするために、小動物のラットではなく、ウサギを用いて検討することとした。この変更は、引き続いてのラットの動注療法の基盤となるデータ獲得のためであり、本研究において重要なデータとなった。この点において、研究の達成度はおおむね順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
ウサギを用いた腫瘍内濃度測定が有用な結果であったことから、大腸癌株を用いたラットの動注療法の有用性について計画通り研究を継続していく。それと同時に、ナノDDS粒子の動態を明らかにする画像化の構築も進めていく。こちらは臨床データも取り入れながら引き続き開発に取り組む計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として今回はウサギを使用したことで匹数が減少したため、余剰額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にラットでの実験を継続するため、余剰分は繰り越しとして使用する計画である。
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