研究実績の概要 |
ラット大腸がん肝転移モデルを用いて新規抗がん剤であるミセル化ナノ粒子(NK012)と通常の抗がん剤(CPT-11)との動注療法における薬物動態を比較・評価した。 F344ラットに対して、同系の大腸癌RCN-9株細胞を培養し細胞浮遊液を調整し、全身麻酔下で1x107個のRCN-9細胞を肝左葉に直接移植する。4週間後に肝腫瘍が形成されたのを確認し、動注手技を実施する。左内頸動脈アプローチで、1.6Frのマイクロカテーテルを挿入する。血管造影を実施し、肝動脈の解剖を把握し、腫瘍濃染を確認する。マイクロカテーテルを固有肝動脈まで挿入して、肝内のみに動注する。 両群の薬剤を上記方法で、肝動脈から腫瘍内に直接動注し、5分、1、3、6、24、72、96時間の各ポイントで3例ずつデータを取得した。検査項目は、NK012, CPT-11, SN-38の3つにおいて、腫瘍内、肝実質内での濃度を測定し、さらに、薬剤に蛍光染色を施し、その染色程度を評価した。 NK012の腫瘍内濃度は、24時間後をピークに徐々に上昇し、96時間後も依然高値を維持していた。CPT-11においては、5分後をピークに濃度は経時的に低下し、18時間後以降はほぼ正常値に近い数値に低下していた。一方、肝実質内濃度においても上記と同様の変化を示した。 NK012が腫瘍内で高濃度を維持した理由としては、ナノ粒子である本薬剤が腫瘍内の未成熟な血管壁を容易に通過することができること、一旦腫瘍内に入った薬剤がリンパ系の欠如した腫瘍内からは容易に漏出しないことが考えられた。また、一方、NK012は約20nmのサイズの高分子化合物であることから排泄機序が肝内のクッパー細胞であることが考えられ、それを示すように投与後経時的に腫瘍内から肝実質内のクッパー細胞に取り込まれていくことが示された。
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