研究課題/領域番号 |
26461833
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西尾福 英之 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80458041)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ナノDDS / 動注療法 |
研究実績の概要 |
平成26、27年度の研究により、ナノDDSの体内動態の解明に向けた研究を実施してきた。ナノDDSの動注薬剤としての有用性を評価するために、VX2腫瘍移植ウサギ肝腫瘍モデルを用いて実施した。超選択的な動脈注入と経静脈的な注入によりその効果と動態の違いについて評価した。投与薬剤としては、ナノDDS製剤SN-38のミセル化粒子であるNK012を用いた。動注群と静注群とで、投与後、3分、30分、1時間、2時間、24時間後に検体を腫瘍、肝実質、末梢血より採取し、濃度測定を実施した。さらに、腫瘍標本としてHematoxylin Eosin染色、TUNEL染色を実施し、腫瘍のネクローシスとアポトーシスを評価した。肝腫瘍内では、静注群と比べて動注群で約5倍の濃度を獲得した。正常肝実質、末梢血濃度については、両群において有意な差は認めなかった。つまり、ナノDDSは腫瘍に選択的に取り込まれ、正常臓器には投与方法による影響はないことが示された。さらに、超選択的な動注療法を実施することでその効果を高めることができることが示された。また、同時に検体の蛍光染色をすることで、経時的にナノDDSの動態を評価した。これにより、腫瘍内、肝実質の変化を見ることで薬剤の排泄経路が主に肝のクッパー細胞経由であることを示すことができた。平成28年度は、大腸がんラット肝転移モデルを作成して、ナノDDS製剤の効果を検証している。まずは、大腸がん細胞株としてRCN-9を用いて、ナノDDS製剤と通常使用されているイリノテカンの感受性について試験を実施したところ、ナノDDSの感受性が高いことが確認できた。次にF344ラットの肝転移モデルを作成し、NK012の動注群・静注群、イリノテカン動注群、コントロール群の4群を設定し、各群における腫瘍内、肝実質、末梢血の薬剤濃度を直後から7日目まで経時的に評価している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26・27年度で実施した研究成果を米国のシカゴで開催された放射線学会と米国のアトランタで開催されたIVR学会で報告したが、そのことをきっかけとして、米国ヒューストンにあるMDアンダーソンがんセンターに招待され、研究留学へ行くこととなった。そのため、平成28年度は約半年間、国内研究が中断したため、予定の実験が遅れているが、帰国後に再開することで、引き続いて研究を実施し、現在概ね予定通りの進行状況に戻りつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
大腸癌株を用いたラットの動注療法の有用性について計画通り研究を継続していく。それと同時に、ナノDDS粒子の動態を明らかにする画像化の構築も進めていく。現在は、蛍光顕微鏡を用いて、各臓器における薬剤の可視化に成功しており、動態の解明を進めている。また、免疫染色を用いることで腫瘍のアポトーシスと薬剤との関係や低酸素と腫瘍増悪の関係についても検討していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26・27年度で実施した研究成果を米国の国際学会で報告したが、そのことをきっかけとして、米国ヒューストンにあるMDアンダーソンがんセンターに招待され、研究留学へ行くこととなった。そのため、平成28年度前半の約半年間、国内研究が中断したため、予定の実験が遅れていたが、帰国後に再開することで、引き続いて研究を実施し、現在も継続中である。ナノDDSの濃度測定費用として不可欠なため、次年度持ち越しとさせていただいた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の実験持ち越しのため、ナノDDS製剤の濃度測定や蛍光染色の検体、組織標本作成費用として使用予定としている。
|