末梢神経障害に対してMRIでの拡散テンソル画像による評価が可能か否かについて検証を行った.まず,末梢神経にみたてた自作ファントムを作成し,一般に臨床で使用されている3T MRIを用いて末梢神経に対して拡散テンソル画像の撮像が可能であることを検証した.撮像コイル,撮像条件設定を変化させて撮像を行い,その違いにより拡散テンソル画像から得られる測定値に影響が出るか否かの検証を行った.撮像コイル,撮像条件設定を変化させることにより,拡散テンソル画像における測定値に違いがでることを確認した.続いて,前述の検討より得られた結果をもとに,撮像コイル,撮像条件設定を固定し,健常ボランティア40名(20歳以上,男性20名,女性20名)の正中神経に対して拡散テンソル画像を撮像した.同時に神経伝導速度測定を行い,拡散テンソル画像から得られた測定値と神経伝導速度測定より得られた測定値に強い相関があることを確認した.更に,10名ほどの正中神経障害患者での拡散テンソル画像の撮像を行った.正中神経障害患者では神経伝導速度測定で異常があることを確認した.拡散テンソル画像の撮像による健常ボランティアの正中神経との比較では,正中神経障害患者では測定値に有意な差が認められた.この結果は,拡散テンソル画像を用いた末梢神経障害の評価が,神経伝導速度測定と強く相関し,MRIによる占拠性病変などの有無についての画像評価のみならず,正中神経から得られる測定値からも末梢神経障害を確定することが可能であるとする結論となった.
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