研究課題/領域番号 |
26461843
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所) |
研究代表者 |
相田 典子 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 部長 (20586292)
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研究分担者 |
富安 もよこ 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 分子イメージング診断治療研究部, 主任研究員(任非) (10443079)
柴崎 淳 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 医長 (30540471)
露崎 悠 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 医長 (70725449)
後藤 知英 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 部長 (50317179)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MRS / 脳内代謝物 / GABA / 小児脳 / 発達 / 神経疾患 / 小児 / 脳 |
研究実績の概要 |
3T装置1H-MRスペクトロスコピーを用いて研究を継続した。PRESS法による通常の1H-MRS測定は、平成20年からの先行研究と併せて解析症例患者は3000例を超え、28年度の延べ解析症例数は580例、原則として深部灰白質、半卵円中心、小脳の3ヶ所にて取得した。 神経疾患を疑われる児のみでなく新生児の全例解析を継続、修正40週以前の早産児での代謝物の変遷を解析したデータを検討し平成25年に論文発表したが、その正常データをもとに新生児例の病態解析を行った。その中には周産期の低酸素性虚血性脳症の治療方針の決定、早産児の退院前の脳の状態評価などが含まれる。嫌気性解糖の指標である乳酸の検出と、神経細胞活動の指標とされるNAA低下により神経予後の予想がより正確になると考えられているが、患児の予後との関連を追っている。満期に近い新生児の低酸素性虚血性脳症における新生児期早期(2日から2週間)のMRSによる代謝物の絶対値濃度と予後の関係を解明した研究成果は、国際MRI学会と第52回日本周産期・新生児医学会学術集会にて発表を行い論文執筆中である。 神経伝達物質GABAの定量を目的としたMEGA-PRESS法による測定は、書面で同意を取得した児に、通常の検査後に追加鎮静措置をせずに取得を試み、26年度からの通算で小児446例の同意を得て404症例で GABA測定を行った。計測部位は深部灰白質と小脳である。その結果を解析し、新生児と年長児との差異を国際MRI学会において発表し、それをまとめた論文が、NMR Biomedicineに掲載された。 他には、新生児では正常でも脳内lactateが高値であることを示した論文をMagn Reson Imagingに発表、日本磁気共鳴学会で新生児脳MRSのDTIなどとの比較を、日本神経放射線学会で新生児メチルマロン酸血症におけるMRS有用性を発表した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3T装置ソフトのバージョンアップに伴い、今年度途中でGABA測定ソフトが使用できなくなった。来年度には新たなシーケンスで再開する。 データ解析作業では、新生児のGABAを含むMRS解析を先行し、これまでに複数の学会発表、論文発表を行ったが、膨大なデータの中で乳児期以降のデータ解析がまだ十分でない。てんかん性脳症など、病態に応じた他の代謝物濃度との対照も含めて解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
3T装置ソフトのバージョンアップに伴い、今年度途中でGABA測定ソフトが使用できなくなったが、新しいバージョンに対応する新たな精度の高いGABA測定用MRSシーケンスをミネソタ大学、シーメンス社との研究契約で新たに導入したため、来年度に再開予定である。具体的な研究展望として、GABA定量の前方視的研究に関しては新生児での解析が論文発表できたが、今後は乳児期以降のてんかん性脳症など、病態に応じた他の代謝物濃度との対照も含めて解析を行う予定で、成果が期待できる。未熟児早期産児医療の発展に伴い問題となっている高次機能を含む周産期脳障害の予後との関連に関しては、通常のMRSデータとGABA定量データを蓄積することにより、将来的には就学時の神経学的あるいは発達の所見と新生児期のMRS解析データ、他のMRI画像データ(拡散テンソル画像や3D撮像からの脳容量計測など)との比較検討を行うことで病態の解明及び予後への影響因子に関する知見が開けることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
新生児脳の解析、データのまとめは順調に進んだが、乳児期以降の小児の解析/検討がやや遅れていたため、発表機会および論文化にかかる費用が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
乳児期以降の小児の解析/検討を進めて、国内外で発表し、論文化を行う費用に充てる。
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