研究実績の概要 |
心筋梗塞におけるmatricellular蛋白の代表であるTenascin-Cの発現と治療的インターベンションとしてのpostconditioningによるTenascin-Cの発現に対する影響、ならびにその後の左室リモデリングへの影響に関して以下の実験を施行した。虚血再還流ラット(30分虚血再還流モデル,n=27)におけるTenascin-Cの発現をI-125標識抗tenascin-C抗体(I-125-TNC)を用い、再還流1,3,7,14日後にオートラジオグラフィにて集積を検討した。その結果I-125-TNCの非虚血部に対する虚血部の集積比はそれぞれ3.73 ± 0.71, 4.65 ± 0.87, 2.91 ± 0.55 (P < 0.005 vs 3 day), 2.01± 0.17, (P < 0.005 vs 1 day and 3 day)と3日でピークに達し、その後漸減した。次いで虚血直後にpostconditioningを行うことでそのTenascin-C発現の及ぼす影響を検討した(n=27)。Tenascin-Cの発現(I-125-TNC)の集積)は1,3,7,14日後でそれぞれ2.59 ± 0.59(p < 0.05), 3.10 ± 0.42( P < 0.005),1.93 ± 0.37 (P < 0.05), 1.40 ± 0.07 (P < 0.001)と有意に低下した。左室リモデリングに関しては虚血再還流2月後に心臓超音波検査にて評価した。その結果30分虚血再還流群(n=6)に対してpostconditioningを施行した群(n=6)では拡張末期径は1.0 ± 0.06 cmから0.90 ±0.15 cm (P<0.05)、収縮末期径は0.90 ± 0.15 cmから0.62 ± 0.19 cm (P<0.05)へと縮小し、%fractional shorteningは10.5 ± 3.7から28.2 ± 10.7 (p<0.005)へと改善した。 以上より、I-125-TNCイメージングにより、心筋梗塞後の間質に発現するmatricellular蛋白の代表であるTenascin-Cは3日でピークとなり以後漸減すること、この発現はpostconditioningにより梗塞1日後から14日後までのすべての時期にわたって抑制されること、postconditioningにより2か月後の左室リモデリングが抑制されることが判明した。
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