研究課題/領域番号 |
26461847
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
瀧 淳一 金沢大学, 大学病院, 講師 (10251927)
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研究分担者 |
柴 和弘 金沢大学, 学際科学実験センター, 教授 (40143929)
小川 数馬 金沢大学, 薬学系, 准教授 (30347471)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | RGD / インテグリン / 血管新生 / 左室リモデリング / 心筋梗塞 / 虚血再灌流 |
研究実績の概要 |
心筋梗塞後の組織修復過程はその後の左室リモデリングを含め予後に重大な影響を及ぼす。梗塞後のリモデリングを規定すると重要な因子の一つと予想される血管新生の画像化をめざして検討を行った。arginine-glysine-aspartic acid (RGD)は血管新生時の内皮細胞の遊走を制御するαvβ3 integrinに特異的に結合するとされている。しかし一方でαvβ3はマクロファージにも発現するとの報告がある。そこでラット虚血再還流モデルにて、I-125-RGDの心筋梗塞後の経時的空間的集積の変化をまず検討した。ついで集積が血管新生を反映するのか、マクロファージ等の炎症生変化を反映するのかを検討した。虚血再灌流ラット(n=31)に対して30分虚血再還流1,3,7,14日と1,2か月後にI-125-RGD(1.48 MBq)を静注し、80分後にarea at risk描出のため冠動脈を再結紮し、直後にTc-99m-MIBI(150-180MBq)を投与した。その1分後に屠殺し心筋を摘出した。心筋スライスを2核種オートラジオグラフィにて画像化した。隣接するスライスに対して病理組織学的検討を行った。免疫組織学的検討ではマクロファージはCD36の染色にて、血管新生はanti-α-smooth muscle actin(αSMA)染色にて評価した。その結果、再還流1日ではarea at risk内のRGD集積は不明瞭であった。3日ではarea at risk部に一致してRGDの弱い集積を、7,14日,1月では強い集積を認め、2月でやや低下した。集積比はそれぞれ正常部の1.22±0.22, 2.27±0.36, 2.04±0.17, 1.93±0.16, 1.57±0.15となった。集積はanti-α-smooth muscle actinで染まる微小血管様構造に空間的、時間的にほぼ一致した。マクロファージの出現とは集積の程度、時期いずれも一致をみなかった。以上より、I-125-RGDの集積は梗塞1週後から著明に増加し、1-2ヵ月にわたって血管新生を反映していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
arginine-glysine-aspartic acid (RGD)の集積機序に関するI-125標識RGDイメージングに関する検討はおおむね順調に進んだ。特にその集積が炎症性変化でなく、血管新生をほぼ反映していることがが示された意義は大きかった。 ただし、小動物用のSPECT/CTによる生体画像に関しては、アイソトープ施設の耐震工事の影響で、装置の設置が年度後半となり、実験計画の遅れとなったため現在遅れを取り戻すべく努力中である。
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今後の研究の推進方策 |
生体イメージングによる検討は昨年度後半よりSPECT/CTが使用可能となったのち直ちに開始している。まず検出器の感度、空間分解能等の基礎的データを収集確認しその信頼性の確認がほぼ完了しつつあり、順次生体イメージングを施行してゆく予定である。使用核種はTc-99m, I-123をまずは予定している。継時的なSPECT/CTによる生体イメージングとして以下の3つのトレーサを考えている。すなわち心筋梗塞後におこる間質の病態の一つであるTenascin-Cの発現状況に関するRI標識抗tenascin-C抗体イメージング、血管新生マーカーであるRI標識RGDによるSPECT/CTでの継時的イメージング、Tc-99m-annexin-Vによる心筋アポトーシスイメージングである。これらの継時的な集積変化と左室リモデリングとの関係を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
小動物用のSPECT/CT装置の設置の遅れに伴い、RI標識トレーサを用いた実験が遅延した。それに伴う経費は繰り越しとした。
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次年度使用額の使用計画 |
SPECT/CT によるラット生体イメージングに使用する、Tc-99m-annexin-V, I-123標識tenascin-C, I-123標識RGDの作成のために使用予定である。
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