研究実績の概要 |
α放射体の211Atは、治療に応用することが期待されている。しかし、211Atの製造には4Heを28-29MeVに加速できる中型加速器が必要であることや211Atの半減期が7.2時間と短いことから、広範囲の需要に応えることができない。本研究では、211Atの広範囲での利用を目的とし、別の核反応系を利用して親核種211Rnを製造し、その211Rnから壊変して生成する211Atを利用した211Rn/211Atジェネレータを開発することが目標である。 211Rnの製造には、232Th(p,spall)211Rnや209Bi(7Li,5n)211Rnが核反応として知られている。そのうち、生成核種数が少なく、また化学分離操作も簡便と考えられる209Bi(7Li,5n)211Rn反応系が製造方法として望ましい。本研究では209Bi(7Li,5n)211Rn反応の最適条件を検討するために、基本的な製造因子である211Rnの核反応断面積を求めた。 高純度Biを高純度アルミ箔に蒸着したものを6枚重ねて1スタックとし、7Liの入射エネルギーをAl箔で減弱させながら合計3スタックの照射実験を行った。照射後の試料はγ線スペクトロメトリーを行い、211Rn, 210Rn, 210At等の核反応断面積を算出した。 211Rnは測定した40-60MeVのエネルギー範囲において、文献値に比べて高い値を示した。文献値は化学操作の介入により生成量を過小評価しているため、我々の値に比べて低くなったと考えられる。211Rnの核反応断面積は53-55MeVで極大となり以後エネルギーの増加と共に減少した。一方、210Rnと210Atを個別に測定した結果は我々の手によって初めて得られた。210Rnの核反応断面積は50MeV以降から7Liの入射エネルギーである60MeVまで増加していった。211Rnを製造するには、7Liの入射エネルギーを押さえつつ、照射後の冷却時間の設定により210Rnを積極的に減衰させる必要があることが明らかとなった。
|