研究課題/領域番号 |
26461857
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
工藤 崇 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (20330300)
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研究分担者 |
福岡 順也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (00324575)
上谷 雅孝 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40176582)
井原 誠 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (60175213)
七島 篤志 宮崎大学, 医学部, 教授 (60380838)
岡市 協生 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (80124874) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | FDG PET / 膵癌 / 腫瘍浸潤 / p53 / テーラーメイド医療 |
研究実績の概要 |
H26年度に引き続き、2010年より2014年にかけて当院にて行われたFDG PET症例の内、膵臓癌を第1の検討対象患者群として選択して、FDG PET画像による検討および、病理標本との対比を行った(ステップ2,3)。腫瘍のSUVmax値(FDGの集積の半定量的評価基準)および正常肝と腫瘍のSUVの比(Tumor to Background Ratio: TBR)を60分値、90分値でそれぞれ求めた。また、SUVmax, TBRのそれぞれの90分と60分値の差分値(SUV-diff, TBR-diff)を検討した。現時点では、病理学的検討が可能であった症例は15例である。静脈侵襲(v), リンパ管侵襲(ly), 膵内神経浸潤(ne)をそれぞれ侵襲無し(0)から強い侵襲(3)に4段階に分類し、統計学的に関係を求めた。また、FDG PETの60分でのパラメーターと、90分でのパラメータのいずれが、病理学的侵襲度の予測により役立つかを検討した。静脈侵襲においてのみFDGのパラメーターと病理所見の間に統計学的に有意な関係が見られた。また、神経侵襲についても、統計学的な有意性には至らなかったが、侵襲度の間に一定の関係が見られた。 v, neともに、90分後像および60分後像と90分後の差分値で、より関係が明瞭になる傾向が見られ、病理学的進展度の予測には通常の投与後60分撮影よりも、90分後撮影が優位性を持つことが明らかとなり、FDG PETによる腫瘍進展度の予測を用いたテーラーメイド治療のためにはFDG PETの撮像時間を通常の60分より遅い撮像時間にすることが有効であることが明らかとなった。ただし、リンパ管侵襲については、全くFDGとの関係が認められなかった。 この、FDGの集積度、FDGの投与後撮影までの時間、と病理学的な進展度の対比については、今まで報告がなく、新たな知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究分担者の一部の学外への異動、退職に伴い、遺伝子解析(ステップ4)の段階の検討が遅れている。また、初年度に明らかとなった症例数の少なさが克服できていない。 一方で、病理学的所見とFDGの集積に関連性においては、従来ほとんど報告のないFDG90分後像との関連性が得られ、2015年の欧州核医学会において、一部結果を発表できたことが成果である。 この新たな知見を生かすため、膵癌症例数を増やすことを考える。このために院内で、現在一つの外科にのみ限定していた症例を、複数の外科に協力を依頼することを計画する。
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今後の研究の推進方策 |
症例追加(ステップ1b)を実行する。このため、現在長崎大学第一外科にのみ依頼をしていた症例協力を、第二外科にも依頼することで、症例の倍増が期待される。症例の増加を見たところで、遺伝子解析(ステップ4)に移行するが、現在FDG PETの90分後撮影と、病理所見の間に関連があり、テーラーメイド治療のためには90分後撮影が望ましいとする、新たな知見が得られているため、この知見を生かすために、膵癌以外の遺伝子解析が期待できない症例(肺がんなど)についても、遺伝子解析を含まない病理学的解析を行い、FDG PETのテーラーメイド治療への応用性を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の一部の学外への異動、退職に伴い、遺伝子解析(ステップ4)の段階の検討が遅延しており、このために遺伝子解析のために計上された費用の一部が使用に至らず、次年度使用額が生じている。また、症例数がまだ遺伝子解析を行うに十分でないことも、理由と考える。
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次年度使用額の使用計画 |
発生した次年度使用額は、遺伝子解析の遅れのために生じたものであるため、遺伝子解析(ステップ4)を実行するものとする。ただし、現在FDG PETの90分後撮影と、病理所見の間に関連があり、テーラーメイド治療のためには90分後撮影が望ましいとする、新たな知見が得られているため、この知見を生かすために、一部は遺伝子解析の可否にこだわらず、肺癌などの症例も含めた、対象症例数の増加を行うものとする。
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