研究課題/領域番号 |
26461863
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
菓子野 元郎 大分大学, 医学部, 准教授 (00437287)
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研究分担者 |
熊谷 純 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (20303662)
小橋川 新子(菓子野新子) 大分大学, 医学部, 研究支援者 (70637628)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイスタンダー効果 / 活性酸素 / 分泌性因子 |
研究実績の概要 |
【目的】放射線照射後の遅発性活性酸素が放射線感受性に影響を及ぼすか否かについて検討を行った。本年度においては、特に照射後の分泌性因子を介したシグナル伝達経路に焦点を絞り、解析を行った。 【方法】ラットグリオーマ由来C6細胞、及びラット正常アストロサイト由来RNB細胞、ヒトグリオーマ細胞、ヒト膵がん由来細胞を用いて、放射線照射後の分泌性因子の働きを調べた。放射線照射4日後、各細胞の培養上清を回収し、別に用意した細胞へ処理し、処理24時間後の放射線感受性を調べた。 【結果】C6細胞においては、非照射細胞の培養上清を処理した細胞に比べて、4Gy照射細胞の培養上清を処理した細胞において、放射線抵抗性になることが分かった。メタボローム解析の結果、細胞内酸化度の軽減に影響を及ぼす還元型グルタチオンの割合が関与している可能性が示唆された。一方、RNB細胞においては、照射の有無による培養上清の違いで放射線感受性に差は出ず、新鮮な培地における放射線感受性とも変わらないことが分かった。がん細胞に比べ、正常細胞では分泌性因子による影響が少ないことが示唆された。また、ヒトグリオーマ細胞BeckerでもRNBと同様の結果であった。ヒト膵がん細胞MiaPaca-2細胞においては、照射の有無にかかわらず培養上清処理により、新鮮培地に比べて放射線感受性が高まることが分かった。 【結論】本年度の解析結果により、細胞種毎に放射線感受性に関わる分泌性因子の働きは異なること、ラットグリオーマ細胞においては、分泌性因子の働きによる放射線抵抗性獲得があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定は、本年度において放射線照射3日後における遅発性活性酸素の生成を複数の癌細胞で調べる予定であった。現在、ヒト細胞に限らず、ハムスター由来細胞、マウス由来細胞、ヒト正常細胞において、照射3日後に遅発性活性酸素が増えてくることを確認できた。また、当初27年度に予定していた分泌性因子による影響評価を前倒しで本年度解析し、ラットグリオーマ細胞において分泌性因子が放射線抵抗性に関わることを明らかにすることができた。ESRによる解析では、ヒト肺がん由来H1299細胞において遅発性誘発長寿命ラジカルの評価を現在行っており、おおむね順調である。総合的に判断して、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はおおむね順調に進展していることから、研究の推進方策について大きな変更は必要ないと考えている。ただし、26年度に前倒しで分泌性因子を介した放射線抵抗性獲得の機構解明を行ったこと、この解析には多くの時間を要することから、26年度に予定していた計画のうち、直接照射細胞における遅発性活性酸素誘発機構の解明にあてる時間を減らしている。27年度以降もこの方針を継続し、直接照射細胞における遅発性活性酸素の評価の時間を減らし、分泌性因子を介した遅発性活性酸素の評価と放射線抵抗性獲得機構の解析にあてる時間を増やしたいと考えている。
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