ラット由来細胞における放射線感受性の変化が環境因子に制御される機構の詳細を明らかにするため、腫瘍株としてC6グリオーマ細胞、非腫瘍株としてRNBアストロサイト細胞を用いて、サイトカイン及び環境因子の影響を調べた。実験では、4Gy照射及び未照射細胞の4日間培養上清を回収し、それらを24時間処理した際の放射線感受性をコロニー形成法で調べ、酸化ストレスをAPF法で調べた。サイトカインの影響については、未照射細胞の4日間培養で最も顕著に変動するVEGFに着目し、培養上清処理時にVEGF中和抗体を同時に処理し、放射線感受性におけるVEGFの関与を調べた。また栄養因子として重要なグルタミン酸の放射線感受性変化への関与を明らかにするため、グルタミン酸欠損培地で24時間培養時の酸化ストレスと放射線感受性を調べた。 その結果、VEGFの中和抗体処理は放射線感受性に影響しなかったが、グルタミン酸欠損培地で24時間培養した場合、C6では顕著にグルタミン酸欠損により感受性の増大が見られた。一方、RNBでは放射線感受性の変化は全く見られなかった。APFによる酸化ストレスの解析では両細胞株ともにグルタミン酸欠損による酸化ストレスの増大がみられ、照射後の酸化ストレスについても正常培地下よりも照射による誘導レベルが大きいことが分かった。C6では、グルタミン酸が関連するグルタチオン代謝への影響がグルタミン酸欠損による放射線感受性増大の原因と示唆されるが、RNBでは感受性の増大が見られなかったことから、栄養因子レベルの変動による恒常性維持機構が正常細胞ほど安定になっている可能性が考えられる。このことは放射線治療の標的因子としてグルタミン酸代謝経路が使える可能性を示している。
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