研究課題/領域番号 |
26461865
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
林 完勇 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (10549918)
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研究分担者 |
東 美智代 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60315405)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 門脈塞栓術 / 脂肪肝 |
研究実績の概要 |
1990年のMakuuchiらの報告以降、肝腫瘍に対する切除前に残肝容積を拡大し、肝切除を可能にする門脈塞栓術は臨床にて幅広く施行されるようになっている。申請者らは2007年に塞栓葉における腫瘍の増大速度が塞栓術前後で加速することを示している(Hayashi et al. Acta radiol 2007)が、このことからも門脈塞栓術を施行する際には、塞栓術後の十分な肝容積の増大が期待される症例を選択しなければ、逆に予後を改悪する可能性がある。 昨今は、肝転移についても、切除することで予後が改善することが知られており、門脈塞栓術の適応は拡大の方向にあるが、十分に肝予備能があると思われた症例の中で門脈塞栓術を施行することで予想以上の肝障害ましてや肝不全を発症する例が存在することも事実である。特に、肝転移症例の肝切除症例においては術前化学療法を施行された症例が多く存在しており、化学療法に伴う脂肪肝が肝切除において問題となっているが、同様に今後門脈塞栓術においても問題となると思われる。 実臨床における実際の塞栓術では、術前の採血データでは十分な肝予備能があると評価された脂肪肝症例の中で、一部で特に強い肝障害が発生し、中には肝不全を発症するなどの症例を経験する。脂肪肝の原因として化学療法などを指摘した論文はあるものの、その原因を明らかにした報告はこれまでのところない。本研究計画は、ウサギの脂肪肝モデルを作成し、塞栓術の影響について脂肪肝と正常肝との間にどのような違いがあり、またそれを改善する方法として塞栓物質の選択変更や高度肝障害を生じる術前の評価項目を明らかにすることで門脈塞栓術の適応の最適化を計るための基盤的研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画としては「ウサギ脂肪肝モデルと正常肝における門脈塞栓術の肝障害の違いの有無を明らかにする」としていた。ウサギの脂肪肝モデルを作成し、正常肝モデルとの間で門脈塞栓術後の肝障害について病理学的に比較評価を行った。なかでも類洞障害に着目して評価を行い、脂肪肝モデルにおいては正常肝モデルと比較して類洞障害を強く発症していることが病理学的に有意差をもって示された。学会発表も終了し、論文化を現在準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪肝モデルにおいて、門脈塞栓術を行うことが将来の残肝予定領域にも障害を起こしていることがこれまでの実験の中で示されたが、今回使用したエタノール以外の塞栓物質でも同様の障害が起こるのかを今後検討し、その差を見つけることができればと考え、実験を継続する予定としてる。
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