1990年の幕内らの報告以降、門脈塞栓術は残肝容積を拡大し、肝切除を可能とする目的に広く拡大肝切除に際して使用されている。一方で、塞栓後の腫瘍の増大や化学療法後の門脈塞栓に伴う肝障害など問題点も多い。実臨床において脂肪肝症例の中で門脈右塞栓後の肝不全発症なども経験されており、その適応についてはいまだ検討の余地のあるところである。脂肪肝モデルにおける門脈塞栓術の影響をウサギ脂肪肝モデルをもちいて検討した。 門脈塞栓後、脂肪肝モデルにおいては非塞栓葉において類同拡張が優位に増悪することが示されたP=0.008 。非塞栓葉と塞栓葉の比較では繊維化を示唆するSMAの沈着が脂肪肝モデル、正常肝モデルいずれにおいても認めており、塞栓による炎症からの繊維化が示唆されたと考えられた。 以上より、脂肪肝症例における門脈塞栓の肝障害が高度に生じている可能性が示唆された。特に、sinusoid obstruction syndromeの原因の一つに化学療法後の門脈塞栓が指摘されているが、脂肪肝症例における類同拡張が門脈塞栓後に生じていることからは化学療法後の脂肪肝などもその原因のひとつとなっている可能性も示唆された。 上記の結果を元に塞栓物質の変更による影響を検討するも、塞栓物質による差異はみられず、安定したウサギ脂肪肝モデルの作成においても見直しを強いられ、十分な結果は得られなかった。
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