研究課題/領域番号 |
26461869
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
村上 康二 順天堂大学, 医学部, 教授 (50200267)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | FDG-PET / ダイナミック収集 / PET/CT装置 / 連続寝台移動 / 時間放射能曲線 / 悪性腫瘍 / SUV |
研究実績の概要 |
現在悪性腫瘍の診断で広く実施されているFDG-PET検査は、通常FDGの注射後60分-90分後から撮影を始め、全身を1回だけ撮影する手法が一般的である。施設によっては90分-120分後に再度撮影する「後期相」を追加し、病変部(もしくは病変が疑われる部位)の集積の経時的変化を見て診断能を向上させる試みもあるが、いずれにせよ得られる画像は一時点における放射性薬剤の静的分布を画像化しているにすぎない。 ところでCTでは造影剤を急速注入してその経時的変化を画像化するダイナミックCTが多くの疾患に於いて有用であるが、これと同じようにFDG-PET検査においても放射性薬剤の経時的な分布変化を見る「ダイナミックPET」が従来の静的画像に新たな情報を加える可能性がある。ダイナミックPET自体は新しいものではなく、以前から脳や心臓核医学検査において用いられてきた手法である。しかし従来は撮像装置の制約から単一臓器に限られた解析法であった。一方、腫瘍PETにおいては原発巣、転移巣を含めると広い範囲の撮影が必要であり、今までの1テーブルごとに画像収集する方式では全身のダイナミック撮影は困難である。そこで我々は4年前に開発された連続寝台移動型PET装置を利用して全身ダイナミックによる腫瘍診断の有用性について検討をしてきた。本装置は連続的に寝台がゆっくりと移動しながら全身を撮像する方式であり、本法を応用すれば全身のダイナミックPETが可能である。すでにFDG注射後一時間後の早期撮影と90-120分後に撮影される後期相の比較が腫瘍の質的診断に有用であるという報告があるが、我々はダイナミックPETによって得られる時間放射能曲線を解析し、様々な腫瘍診断においてダイナミックPETがどのように臨床診断に寄与するかを解明することを本研究の目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は9月に主任研究者が所属施設を異動したため、やむを得ず一旦研究が中止した。しかしながら異動先の施設においても連続寝台移動撮像法(以下FMT)が可能な装置が導入されており、さらに最新バージョンである「画像の重ね合わせ」が可能なソフトウェアの搭載されているため、研究を継続する事が出来た。 新施設ではIRBの必要がないファントム実験を実施した。従来の研究はFMTと従来法の撮像方式を比較する実験を行っていたが、今回はダイナミックデータの「重ね合わせ」が可能になったことから、FMTのパス数(撮像のため往復する回数)と画質の関係、ノーマルボランティア2名によるダイナミックスキャンの実施を行った。 その結果、撮像時間を同一にすればパス数を10回程度まで増やしても、「重ね合わせ画像」には影響しないことが判明した。当初はパス数を増やせば時間分解能が向上するものの1パス当たりのノイズが増えることから、重ね合わせの画像にもノイズが加算され画質は低下するものと考えていたが、予想と異なる結果であった。 ノーマルボランティア2名によるダイナミックスキャンの結果では消化管の生理的集積や尿管の集積は経時的変化を解析すると明らかに正常臓器の集積や病的集積と異なる事が判明した。今後は症例を集めて統計的な有意差を出す必要があるものと思われた。また脳の生理的集積は注射直後から90分後までは経時的に上昇するものの、筋肉の集積はほぼ一定、肝臓の集積は注射後から次第に減少するなど、従来からの報告と一致したものであり、現在の収集方法でも十分に信頼性のあるものであることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は主任研究者の異動により研究が半年ほど遅延しているが、前年度の懸案事項であった「画像重ね合わせ」の解析ソフトウェアが開発され、使用可能となった。このため現在は通常の臨床撮像条件でダイナミックデータの収集が可能となり、症例の収集計画が飛躍的に早まった。現在は後向き研究で正常臓器・生理的集積の鑑別が可能かどうかをまとめており、また前向き研究で疾患ごとの解析を新しい施設において倫理委員会に諮る予定である。また現在実施しているファントム実験も引き続き継続し、今後は最も適したS/N比の得られる寝台速度・重ね合わせ条件を設定する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年9月に主任研究者が所属施設を異動し、研究が半年ほど中断したため。 新しい所属先でも同様の設備があるため研究自体は継続が可能であるが、新規施設の立ち上げのためにすぐに研究を再開することは困難であった。
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次年度使用額の使用計画 |
従来の研究成果を2017年の国際学会にて発表をする予定であり、その旅費に充当する予定である。
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