研究実績の概要 |
これまで研究代表者は、1)多くのヒト癌細胞株においてSerine-Threonine Kinase 38 (STK38)活性の亢進が認められること、2)STK38標的としたsiRNAによる発現抑制は、放射線増感を誘導すること、3)STK38がin vitroでp53やCDC25Aをリン酸化することなどを見出してきた。そこで本研究では、STK38をbaitとして、in vivoにおける生理的活性化複合体のプロテオーム解析を行い、DNA損傷シグナル伝達制御における新たな分子基盤の構築とSTK38を標的とした増感メカニズムの解明を目指し、独自の抗活性型STK38抗体およびSTK38の基質リン酸化を指標とした感受性予測法を確立することを目標としている。 これまでのプロテオーム解析の結果、生理的条件下においてSTK38と相互作用する分子として、新たにDNA二本鎖切断修復にかかわる因子を複数同定した。これらのSTK38相互作用分子は、In vitroにおいて、リコンビナントSTK38によってリン酸化されることも判明した。また一部の基質においては、質量分析法によるリン酸化部位の同定にも成功した。現在、これらの新しい基質においてリン酸化部位変異体発現ベクターを作成し、安定的にリン酸化部位変異体を発現する体細胞変異株を樹立中である。今後は、野生型発現株とリン酸化部位変異体発現細胞における放射線感受性、DNA二重鎖切断修復能、アポトーシス誘導能などを比較し、STK38の生理的な意義を明らかにする。さらにリン酸化部位を同定できた基質タンパク質については、部位特異的抗体抗体を作成し、感受性指標としての有用性を検討を行う。 また研究代表者は、本課題に関係する放射線感受性のメカニズムに関して、一般人向けのDVD教材の編集にも携わった(日本アイソトープ協会「Effects of Radiation on Human body」M. Izumi, A. Enomoto, N. Sugiura, H. Tauchi, Y. Matsumoto, B. Y. Hales, K. Shiotsuki, T. Shibata.(2015))。
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