研究課題
放射線を照射された細胞内では、DNA切断をはじめ、脂質やタンパク質などの酸化損傷が発生する。これらの損傷情報はセンサー分子の活性化や代謝変化などを誘発しシグナル伝達という形で細胞内に情報伝達される。そして細胞は様々な翻訳後修飾や遺伝子発現を惹起させることにより適切な細胞応答を誘導し、これらの損傷に対して修復や適応を行う。特に、翻訳後修飾の1つであるタンパク質リン酸化は、DNA修復、細胞周期、細胞死などの損傷応答誘導などに重要な役割を果たしている。研究代表者は、ヒトT細胞白血病細胞株MOLT-4から放射線耐性バリアントを樹立し、それらの遺伝子プロファイル解析からバリアントで高発現しているものとして、セリンスレオニンキナーゼの1種であるSerine Threonine Kinase 38 (STK38)遺伝子を同定した。STKSTK38は、X線やH2O2などの酸化ストレスによって顕著に活性化されることを見出したまた多くのヒト癌細胞株では正常細胞より高いSTK38活性を有しており、STK38を標的としたsiRNA導入により多くのヒト培養細胞において放射線増感効果が認められた。さらにタンパク質相互作用解析や二次元電気泳動そしてリン酸化タンパク質染色法などのプロテオーム解析により、これまでにin vitroにおける基質・相互作用因子として30種以上のタンパク質を同定した。それらの中には、DNA修復、チェックポイント制御、アポトーシス誘導などの放射線細胞応答を制御する因子が複数含まれていることが判明した。特にSTK38はX線照射後、CDC25Aのセリン76リン酸化を介して、その安定性及びG2チェックポイントを制御していることを明らかにした。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Mutat. Res.
巻: 815 ページ: 1-5
10.1016/j.mrgentox.2016.12.005.
Nature Commun.
巻: 7 ページ: -
10.1038/ncomms12808