研究課題/領域番号 |
26461882
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
小川 良平 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (60334736)
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研究分担者 |
鍵谷 豪 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (30524243)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エクソソーム / shRNA / miRNA |
研究実績の概要 |
HEK293細胞を、エクソソーム(Ex)を大量に発現する細胞に改変するために、中性スフィンゴミエリナーゼ(n-SM)遺伝子のクローニングを試みた。まず、培養したHEK293細胞を回収し、トータルRNAを鋳型にPCR法でcDNAをクローニングしてみたが、いろいろな長さの断片がクローニングされ、さらに制限酵素パタンが予想と大きく異なるため、PCRのプライマーの長さや配列を変更してさらに試みたが、n-SMのcDNAは得られていない。現在は、poly Aが付加したRNAを単離して、それを鋳型にPCRを進めている。また、n-SMだけでなく、TSAP-6についてもクローニングを始めた。 HEK293細胞の改変に2つ以上の遺伝子を導入する可能性も考えて、異なる2種類以上の薬剤耐性遺伝子を持った組換えレトロウイルス構築用ベクターの作成を試みることにした。とりあえず2種として、利用する薬剤はピューロマイシンとハイグロマイシンであるが、それぞれの耐性遺伝子を導入したものを構築し、材料として確保できており、遺伝子クローニング後の構築ストラテジーも確立した。 Exに封入するためのshRNA、miRNAに関しては、現在までに2種類の遺伝子に関して検討を行っている。一つは、HIFαであるが、HIF1αとHIF2αの共通部分を認識するようデザインしたmiRNA様shRNAが、効率良くHIF1αとHIF2αの両方の発現や機能を阻害することを発見した。これが低酸素領域でのHeLa細胞の放射線抵抗性の獲得を抑制することを示し、このshRNAが放射線治療を増感する可能性を見出した。このshRNAは、Exに封入するための候補の一つと考えている。また、抑制することで放射線感受性を増強するUHRF1遺伝子についてもmiRNA様shRNAを作成し、その効果の検討を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗は少し遅れ気味である。まず予想に反して、Exの分泌を促すとされる遺伝子のクローニングがうまくいっておらず、まだ一つもクローニングできていない状況である。できるだけ早くクローニングし、細胞の改変を試みたい。 目的の細胞は入手できたが、Exの検出、特にその精製や濃縮に関しては、商業ベースでキットなども利用できるが、まだ検討していないのが現状である。手応えを感じておくためにも、早めに一度検討しておきたい。 Ex粒子に導入して送達するmiRNAやshRNAについては、現在までに2種類検討を始めている。今後はさらに数を増やして検討を続けていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の一番大きな課題は、ExへのshRNAの封入やExに封入したshRNAの送達を確認することである。そのシステム構築を確認するためのコントロールshRNAやコントロール細胞については、ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)を利用したい。Lucに対するshRNAおよびLucを恒常的に発現する細胞をそれぞれ構築する予定である。 また、もう一つの重要なポイントとしては、必要遺伝子のクローニングが挙げられるが、これにも注力する。クローニング確認のための塩基配列分析に関しては体制が整っているので、PCRで増幅できたものから順に確認に回し、今年度のはやいうちにクローニングし、発現ベクターの開発及びその機能の確認までを確実に進めていきたい。安定的な遺伝子導入ベクターの確立についてもレトロウイルスかレンチウイルスかを早めに最終決定し、3種類目以上の薬剤耐性遺伝子の入れ替えなど、クローニング前からできることを始めておきたい。 そのためには、Exの検出、精製、濃縮などに関しての基本的な技術の確立についても早めに検討を始めていきたい。検出に関しては、Exのマーカーの一つであるCD63のイムノブロットを現在すでに進めているところであるが、既存の技術の組み合わせであるので、比較的容易に確立できると考えている。精製、濃縮に関しては、未知数であるが、商業的に利用できるものを一度使用してみる。その後、必要に応じて改良等を加えていきたい。 放射線感受性を修飾する機能を持ったmiRNAやshRNAに関しては、現在のペースで進めていく予定であるが、HIFαやUHFR1以外の新たなものについても検討したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度に予定していた、エクソソームの分泌に関する遺伝子のクローニングがうまくいかず、他の実験に使う予定の時間を遺伝子のクローニングに費やしたため、予定していた実験をすべてこなすことができなかった。そのため、予定していた実験の一部(特に細胞により分泌されるエクソソームの検出、精製、濃縮などの実施)をペンディングにし、27年度に実施することとし、それらの実験に使用する予定であった分の費用も27年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した分は、27年度に改めて実施するエクソソームの検出、精製、濃縮をするための抗体、キット、その他の消耗品などに当てる予定である。
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