研究課題
近年、概日周期と低酸素応答の相互作用によって細胞内代謝産物が変化し、これががんの悪性化や治療抵抗性を誘導する可能性が指摘されている。平成26~28年度の3年間に亘る本研究では、“HIF-1 活性をリアルタイムに可視化する技術”を用いて、概日リズムと低酸素レスポンスの相互作用ががん細胞の治療抵抗性に及ぼす影響を、細胞~腫瘍組織、さらには動物個体レベルで時間空間的に解析することを目指している。平成26年度は、遺伝子工学的に概日周期制御因子の活性を調節した場合にHIF-1活性が変化するメカニズムを解明した。具体的には、HIF-1αタンパク質の転写活性化能(trans-activation活性)が亢進することを見出した。当初の計画通りに分子細胞生物学的研究を実施することで、がん細胞が悪性形質や放射線抵抗性を獲得する機序に関する基礎的知見を収集することが出来た。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに分子細胞生物学的研究を実施することを通し、「概日リズム制御因子の活性化によってHIF-1の転写活性化能(trans-activation活性)が亢進することを明らかにすることが出来たため、当初の計画通りに順調に研究が進展していると自己評価した。
1, 細胞における低酸素と概日リズムの相互作用と代謝系リプログラミングへの影響の検証: 血清ショックなどを用いて概日リズムの同期を行い、低酸素レポーター遺伝子を用いて、概日リズムと低酸素応答の関係性についてリアルタイムイメージングを用いて検証する。また、概日リズムの同期を行った細胞のHIF-1 をノックダウン、もしくは阻害することにより、概日リズム遺伝子や代謝系の変動についてレポーター遺伝子や定量PCR などを用いて評価を行う。2, 個体レベルにおける低酸素と概日リズムの相互作用と代謝系リプログラミングへの影響の検証: 低酸素レポーター遺伝子導入トランスジェニックマウスやレポーター導入がん細胞株を用いて、移植腫瘍内における概日リズムによるHIF-1 活性化の変化について検討する。また、その結果を基に低酸素応答を誘導する試薬などを用いた場合や、概日リズムに変調をきたす処理を行った際の、低酸素応答の日内変動や代謝系への影響を検討する。3, 低酸素レスポンス、概日リズム、代謝系リプログラミングを介した腫瘍悪性化、放射線抵抗性メカニズムの解明: 上記2 つの検討より得られた知見を基に、概日リズムや低酸素応答、代謝系リプログラミングの位相を様々に変化させた腫瘍を作出する。それらの腫瘍において、放射線抵抗性や悪性度について、in vitro では細胞生存率や増殖速度を、in vivo に於いては腫瘍の増殖速度やマウス体重への影響などを指標として検討を行う。
年度末に入手できる予定であった海外製研究試薬の輸入に時間が掛かり、年度内に入手できなかったため。
次年度の初めに研究試薬を輸入して、研究を実施する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件) 備考 (3件)
Oncogene
巻: 34 ページ: 4758-4766
doi: 10.1038/onc.2014.411.
Nature Communications
巻: 6 ページ: 6153
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doi: 10.1038/srep03793.
http://radiotherapy.kuhp.kyoto-u.ac.jp/biology/
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2014/150113_1.html
http://www.natureasia.com/ja-jp/ncomms/abstracts/61434