研究課題
近年、概日周期と低酸素応答の相互作用によって細胞内代謝産物が変化し、これががんの悪性化や治療抵抗性を誘導する可能性が指摘されている。平成26~28年度の3年間に亘る本研究では、細胞の低酸素応答で重要な役割を果たす転写因子(HIF-1)の 活性をリアルタイムに可視化する技術などを用いて、概日リズムと低酸素レスポンスの相互作用ががん細胞の治療抵抗性に及ぼす影響を、細胞・腫瘍組織・動物個体レベルで時間空間的に解析することを目指している。そういった状況の中で平成27年度は、概日周期制御因子PER2とHIF-1が相互作用する機序に迫る分子生物学的研究を実施し、以下の結果を得た。(1)HIF-1依存的にルシフェラーゼ発光を生じるレポーター遺伝子を用いることで、PER2がHIF-1活性を亢進することが明らかになった。(2)HIF-1の主要サブユニットはHIF-1αであるが、HIF-1α promoterからの転写開始速度や、HIF-1α蛋白質の翻訳開始能を各々ルシフェラーゼ活性としてモニターできるレポーター遺伝子を活用することで、PER2が両者に大きな影響を及ぼさないことを明らかにした。(3)クロマチン免疫沈降実験を実施することによって、HIF-1α下流遺伝子のプロモーターに対するHIF-1α蛋白質のリクルートが、PER2によって促進されることを見出した。(4)遺伝子工学的技術を駆使してPER2の系統的欠失変異体を準備することによって、HIF-1活性の亢進を担う活性ドメインを同定することが出来た。 以上の結果をもって、概日周期制御因子PER2がHIF-1を活性化する機序を明らかにすることが出来、当初の予定を完遂することが出来た。
2: おおむね順調に進展している
「概日リズム制御因子PER2がHIF-1の転写活性化能(trans-activation活性)を亢進する際に重要な活性中心を明らかにすることが出来たため、当初の計画通りに順調に研究が進展していると自己評価した。
共免疫沈降法やルシフェラーゼアッセイの他、ウェスタンブロッティングなどの実験法を組み合わせて、概日リズム制御因子PER2がHIF-1を活性化するメカニズムをより詳細に解明する。同時に、概日リズム制御機構と細胞の低酸素応答機構のクロストークが担う機能を空き落下にする。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 15666
doi: 10.1038/srep15666.
Oncogene
巻: 34 ページ: 4758-4766
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http://radiotherapy.kuhp.kyoto-u.ac.jp/biology/index.html