研究課題
近年、細胞の概日周期制御機構と低酸素環境応答機構の相互作用によって、がんの悪性形質や治療抵抗性が誘導される可能性が指摘されている。本研究では、両者のクロストークを担う分子機構を解明すること、そして得られた知見を基に新たな治療法を確立する基盤を作ることを目指して、以下の研究を実施した。これまでの研究で我々は、HIF-1依存的にルシフェラーゼ発光を生じるレポーター遺伝子等を活用して、時計遺伝子PER2を過剰発現させた場合に低酸素誘導性転写因子1の活性が亢進することを見出していた。我々はこれを、細胞の概日周期制御機構と低酸素環境適応応答機構のクロストークを解析する良好なモデルケースとして活用できると考えた。そして本研究で我々は、当該時計遺伝子がHIF-1を活性化する機序として、以下のように新たなメカニズムを見出した。まず、Western blottingをはじめとする一連の分子細胞生物学的実験を通じて、PER2を過剰発現させてもHIF-1α蛋白質の発現量が変化しないことを見出した。次に定量的なCHIP assayを実施することによって、PER2の過剰発現によって、HIF-1α蛋白質が下流遺伝子のプロモーター領域にリクルートされることが明らかになった。系統的なPER2欠失ミュータントを用いることによって、PER2のHIF-1αに対する正の作用に、PER2のN末端領域が必要であることを明らかにした。以上の結果をもって、概日周期制御因子(時計遺伝子)PER2がHIF-1を活性化する機序を明らかにすることが出来、当初の予定を完遂することが出来た。
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Oncotarget
巻: 7 ページ: 65837-65848
10.18632/oncotarget.11670
http://radiotherapy.kuhp.kyoto-u.ac.jp/biology/