研究課題
本研究では、肺・肝臓癌の放射線治療において、患者毎の残存肺・肝機能に応じた正常肺・肝への線量低減により安全性を向上することを目的とし、機能的画像を用いたオーダーメイド放射線治療法の開発を行った。肺機能画像として4次元CTによる肺換気画像と肺血流シンチを、肝機能画像としてガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)造影MRI(以下、EOB-MRI)を用いて高機能領域を描出した。この高機能領域への照射線量を現行の高精度放射線治療により選択的に低減させ、実臨床において有害事象の低減につながるか否かを検証した。肺機能画像については、前向き研究として進行肺癌60例を対象とし、通常照射での放射線治療計画において前述の肺機能画像を融合し、以下の結果を得た。①各患者の全肺に対する機能肺体積の割合とCOPD国際ガイドラインの重症度分類に相関を認めた。②Grade 2,3以上の放射線肺臓炎は、全肺に対する機能肺の割合が低い症例ほど、機能肺に対して20Gy以上照射された体積の割合(FV20%)及び機能肺の平均肺線量(FMLD)が低値でも発生し、機能肺の割合と放射線肺臓炎の発生に有意な相関を認めた。肝機能画像については、EOB-MRIより描出した肝機能画像を肝定位照射を施行した20例の治療計画画像に融合し、機能肝を避ける計画をIMRTを用いて行った。機能肝を融合せずに行った計画と比較して、機能肝を避ける計画の方が、肝V20Gyや平均肝線量の有意な低下を認めた。以上の結果から、今後、各患者の状態に応じたオーダーメイド放射線治療の実現のため、肺・肝機能画像を用いた前向き臨床試験を実施予定である。
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Advances in Radiation Oncology