本申請研究「アセチル化グルコース修飾による制癌剤・分子標的薬剤の放射線増感剤としての創出」は、アセチル化グルコースを放射線による抗腫瘍効果の増強分子として種々の制癌剤や分子標的薬剤に修飾し、腫瘍細胞および腫瘍移植鶏卵モデルを用いて放射線増感剤としての有用性を評価し、臨床利用が可能な放射線増感剤の創出を行うものである。平成28年度の研究実施計画は、「アセチルグルコース修飾ゲフィチニブUTX-103の上皮成長因子受容体(EGFR)に対する阻害活性の評価と腫瘍移植鶏卵モデルを用いたin vivo抗腫瘍活性の評価」である。得られた結果として、UTX-103は0.1~3 uMの濃度範囲でEGFR阻害活性を示さなかったが、グルコース修飾ゲフィチニブUTX-108は3 uMで弱いEGFR阻害活性を示した(ゲフィチニブの1/3程度の阻害活性)。UTX-108は細胞内においてグルコースが外れてゲフィチニブの脱メチル体(UTX-107)に一部変化しているため、UTX-107の阻害効果によるものであると思われる。以上の結果より、アセチルグルコース修飾ゲフィチニブUTX-103の強い抗腫瘍活性および放射線増感活性は、EGFR阻害作用に依存しないことが示された。なお、腫瘍移植鶏卵モデルを用いたin vivo試験は研究期間の都合上で未実施であり、本年度の研究実施計画は半分程度しか達成できなかった。
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