研究課題
腫瘍細胞は増殖する際などにアミノ酸が必要となる場合、細胞膜上にあるアミノ酸トランスポーターを介してアミノ酸は取り込まれる。特に腫瘍細胞ではL型中性アミノ酸トランスポーター(LAT)の存在が重要である。そのLATの代表的なアイソフォームとして、LAT1とLAT2があり、LAT1はがん細胞特異的であり、LAT2は正常細胞に分布する。両者の輸送アミノ酸基質選択性にも違いがあり、LAT2が中性アミノ酸全般を輸送するのに対して、LAT1は主に大型の中性アミノ酸(ロイシン、チロシンなど)を輸送されることがわかっている。ここでは中性アミノ酸の中でもホウ素修飾が比較的容易であると考えられる芳香環系アミノ酸であるフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどをターゲットとした。我々が開発したアルファーメチルチロシンはLAT1に選択性の高いアミノ酸誘導体(非天然型アミノ酸)である。研究期間中もこの有用性については報告してきた。しかしながら、ホウ素中性子捕捉療法用薬剤として使用するためには大量のホウ素濃度が必要となる。そのために水溶性を向上させることを行ってきたが、ある程度の水溶性は獲得できたが、アミノ酸トランスポーターの取り込みがされなくなったり、またLAT1自体の選択性が低下してしまった。複数のホウ素を修飾させることも試みたが、本件球で使用できるようなホウ素中性子捕捉療法用薬剤を開発することはできなかった。しかしながら、LAT1の有用性は示すことが出来たので、低分子に拘らず、ペプチドにクラスターホウ素を修飾するなどの方法で、LAT1を中心としたホウ素中性子捕捉療法用薬剤開発に大きく転換していくものと考えている。
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