研究課題/領域番号 |
26461896
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
早川 和重 北里大学, 医学部, 教授 (70114189)
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研究分担者 |
三藤 久 北里大学, 看護学部, 准教授 (40260856)
蒋 世旭 北里大学, 医学部, 准教授 (70276153)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺腺癌 / Vimentin / 予後因子 / バイオマーカー / 放射線治療 / 放射線感受性 / 放射線反応性 |
研究実績の概要 |
肺線癌の中でmicropapillary componentを有する腺癌(MPC腺癌)の悪性度が高い要因を検討した.2次元電気泳動によるproteomics 解析では19 proteinが通常の腺癌に比べて1.5倍高く,とくに,vimentin,は MPC腺癌で3.5倍の発現が認められた。次にMPC腺癌症例101例と通常の腺癌症例119例の病理標本を用いて免疫組織化学染色による半定量的解析を行った。その結果,vimentinの発現はMPC腺癌例の95例(94.1%)で認められ,non-MPC腺癌では,高分化型で11/41 (27.5%) ,中分化型で30/41 (73.2%), 低分化型で37/37 (100.0%) に認められた。しかし,vimentinの発現程度をスコア化して評価したところ,MPC腺癌は通常の中~高分化型腺癌ならびにAC-MPCのMPCでない部分に比べて発現スコアは有意に高かった(P < 0.0001)。しかし,低分化型腺癌と比べると発現度には有意さは認められなかった(P = 0.561)。さらに,MPC腺癌の中でvimentinの高発現は血管浸潤とリンパ節転移の進行度とよく相関していた(P < 0.02)。多変量解析でもvimentinの高発現とリンパ節転移の進行度は予後に影響する独立した因子であった(P < 0.048)。 臨床的に腫瘍径3 cm以上の腺癌例についてMPC例と通常例とを比較すると,MPC例では血管浸潤,胸膜浸潤,リンパ節転移の頻度が有意に高かった (all P < 0.0001)。また,MPC腺癌101例とnon-MPC腺癌528例について,経過観察期間がそれぞれ38.1か月 (4.5~123.8月)と45.7か月 (3.1~136.2月)の5年全生存率と無再発生存率は,MPC腺癌が66.1%と31.1%, non-MPC腺癌が89.3%と76.8%であり,MPC腺癌の予後が有意に不良であった (P < 0.0001)。また,通常腺癌を分化度に分けて比較したところ,MPC腺癌の予後は高分化ならびに中分化型腺癌と比べて有意に不良であった(P < 0.0002)が,低分化型腺癌との間には有意差は認められなかった (P = 0.5259) 。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺腺癌の病理組織学的特徴と予後との関連性について検討した。micropapillary componentを有する腺癌(MPC腺癌)の生物学的特徴とこれを区別するためにvimentinの免疫組織染色が有効であることが検証された。また,vimentinの発現の程度と予後との関連性が示唆され,バイオマーカーとして期待できる可能性が示された。今後はvimentinの発現と放射線治療効果,治療成績との関連を検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Vimentinの発現がバイオマーカーの候補になる可能性が示唆されたため,放射線治療患者を対象として,vimentin発現と放射線感受性,反応性との関連,放射線治療成績との関連性について検討する予定である。また, micropapillary componentを有する腺癌(MPC腺癌)とEGFR mutationの有無との関係,EGFR mutationの有無と放射線治療の効果との関連性も合わせて検討する。併せて扁平上皮癌における免疫組織化学染色によるバイオマーカーの検索を行う。その後,抽出された特徴的所見に基づき,肺がんの放射線治療成績を分析し,肺がん放射線治療におけるバイオマーカーの検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通り執行しているが多少のずれが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の交付金と合わせて,バイオマーカー検討時に使用する消耗品の購入に充てる。
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