研究課題
化学放射線療法を施行した局所進行非小細胞肺癌64例を対象としてEGFR遺伝子変異の有無による治療効果と治療成績を比較検討した.対象患者64例の内訳は,男性48例,女性16例,非喫煙者14例,喫煙者(履歴も含む)50例,IIIA期29例,IIIB期35例であった.このうちEGFR遺伝子変異は15例(23%)に認められ,非喫煙者は変異群に有意に多かった(p<0.001).また,EGFR-TKIは変異陽性群全例に投与されていたのに対して野生群では投与されたのは3例のみであった.EGFR遺伝子変異の有無による初期治療効果は,変異群でPR10例,SD5例,奏効率66.7%であり,野生群ではCR2例,PR35例,SD7例,PD4例,NE1例,奏効率75.5%であった(p=0.84).無増悪生存期間(PFS)はEGFR変異型が野生型に比べて有意に短かった(中央値 6.3 対 9.5 か月, p < .001).一方,全生存期間では変異型の方が野生型より長い傾向がみられたが,両群の間に有意差は認められなかった(中央値37.1 対 21.1 か月, p = 0.26).局所再発は変異群1例,野生群15例,遠隔再発は変異群14例,野生群29例で,遠隔転移再発は野生型よりも変異型の群で高頻度に認められた(p=0.01).以上から非小細胞肺癌に対する化学放射線療法ではEGFR遺伝子変異の有無で治療戦略を検討する必要があると考えられた.とくに変異陽性例にはEGFR-TKIの投与で生存期間の延長はみられるものの初期治療の強化が必要と考えられた.
2: おおむね順調に進展している
初年度,肺腺癌に特徴的にみられるmicropapillary componentのバイオマーカーとしての意義について報告したが,今年度は腺癌に特徴的に認められるEGFR遺伝子変異のバイオマーカーとしての意義について検討した.その結果,EGFR遺伝子変異の有無により治療効果ならびに治療後の病態に差が認められ,EGFR遺伝変異の有無は薬剤の選択のみならず,バイオマーカーとしての意義もあることが確認された.
過去2年間の研究成果を踏まえ,検出されたバイオマーカーの組み合わせを含み,新たな治療効果予測マーカーの抽出と最適な治療戦略の検討を行う.また,血液中の腫瘍マーカーとの相関性も検討する.
ほぼ計画どおりに使用しているが消耗品購入費が当初見込より安く抑えられたため
次年度研究費と合わせて消耗品購入に使用する。
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Int J Radiat Oncol Biol Phys.
巻: 93 ページ: 989-96
10.1016/j.ijrobp.2015.07.2278