研究課題/領域番号 |
26461897
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
深田 淳一 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50338159)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射線生物学 / グリオーマ |
研究実績の概要 |
ヒト由来グリオーマ細胞の複数のセルラインに対して低線量単回照射(0.2Gy、0.4Gy、0.6Gy、0.8Gy)を行い、細胞生存率をコロニー形成法で測定した。線量依存性に細胞生存率の低下が観察され、0.8Gy照射における細胞生存率(3回の平均値)がU_87、LN_229、U_251、LN_428でそれぞれ0.81±0.10、0.89±0.84±0.03、0.86±0.03であった。LN_428における0.2Gy照射時とLN_229における0.4Gy照射時に比較的急峻な生存率低下が見られたが、これはU_87とU_251においては認められなかった。この結果からセルラインによる照射感受性の違いが推測された。他の手法による生存率の確認としてトリパンブルー染色による細胞数測定・生存率測定を複数回施行したが、データのばらつきが大きくプロトコールの再検討が必要と考えられた。 これに続いて、反復照射の実験として各セルラインの照射間隔(1分、3分、5分)を変じて0.2Gy×10回の低線量放射線照射を行い、コロニー形成法で生存率を測定した。いずれのセルラインにおいても、照射間隔が長くなるに従って生存率の低下が見られた。 さらに、セルラインに対して低線量単回照射(0.2Gy、0.4Gy、0.6Gy、0.8Gy)を行い、フローサイトメトリー法で細胞周期を測定した。明らかなG0/G1期とG2/M期の比率変化は認められなかったが、低線量照射においても、U_251を除いた3種類のセルラインU_87、LN_229、LN_428でDNA量のピークのシフトが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グリオーマ細胞セルラインを用いたコロニー形成法では、複数回施行において、再現性のある結果を得ることができた。コロニー形成法は結果が判明するまでに時間を要するものの、実験スケジュール通りに進行している。 一方、トリパンブルーを用いた生存率測定については、初回に播種する細胞数の正確性に限界があることから、データのバラつきが認められた。このため、今年度に十分といえるデータを得るには至らなかった。試行回数の増加が必要であり、引き続き継続して実験を行う。 フローサイトメトリー法による低線量単回照射時の細胞周期測定においては、細胞周期の明らかな変化の検出には至らなかった。しかしながら、1種類を除くすべてのセルラインでDNA量のピーク値にシフトが見られており、これについても引き続き実験を継続し、結果を確認する必要がある。 全体として、単回低線量照射による検討(コロニー形成法、フローサイトメトリー法)の結果より、0.2Gy,0.4Gyといった低線量照射における放射線超感受性として矛盾しない結果が複数のセルラインで観察されており、予定の実験をすべて終了していないものの初年度としてはおおむね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、①トリパンブルーを用いた生存率測定、②複数回反復照射による至適照射間隔の探索、③フローサイトメトリー法を用いた細胞周期の変化の観察について引き続き検討する。②については照射間隔を5分より長くした際の生存率についても検討を加える。また、②③については照射線量を変えた実験も行う。②③の結果が確認できれば、①についても複数回反復照射による生存率測定も追加する予定である。データのバラつきが解消できない場合、セルソーターを用いて正確な細胞数の播種、回収を行うことも考慮する。 別のアプローチとして、AnnexinV抗体を用いたアポトーシスの初期段階の検出も試みる。これは上記の実験により効果的な照射線量・スケジュールが決定したのち、その条件を用いて行う。フローサイトメトリーを用いて測定を行う予定であるが、結果が予想と異なる場合、蛍光顕微鏡による観察および、TUNEL法による測定を行い、結果を比較検討する。 ここまでの検討が終了したら、通常1回照射と低線量反復照射における細胞生存率・細胞周期・DNA 損傷・がん幹細胞マーカーの測定を行う。測定はフローサイトメトリー法と、Western blot 法で行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である
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次年度使用額の使用計画 |
次年度執行予算と合算し、消耗品の購入に充当する
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