研究実績の概要 |
まず、BH3 interacting-domain death agonist (BID)遺伝子を発現するレトロウィルスベクター及びコントロールベクター (mock)を作成し、これらのベクターを関西医科大学大学脳神経外科グループ所有のヒト神経膠腫幹細胞株にin vitroで感染導入させ、BID過剰発現ヒト神経膠腫幹細胞株とそのmock幹細胞株を作成した。次いで、ヌードマウス脳内にこれらの幹細胞株を生着させ、生体内で消失半減期の長いpegylated interferon (PEG-IFN)-α及びplacebo (生理食塩水)を4回 (1回/week)、ヌードマウスに皮下注射し、BID遺伝子治療に対するIFN-α感受性をin vivoで検討した (Mock+saline, Mock+IFN, BID+saline, BID+IFNの4群, 各群n = 6)。その結果、生存期間解析としてKaplan-Meier法によりlog-rank検定を行うと、BID+IFN群で生存期間の有意な延長が見られた(p = 0.0251)。これら各群の脳検体を用いて、アポトーシスに関する蛋白質発現を免疫染色法にて検討すると、BCL2 (アポトーシス抑制に関与)発現がBID+IFN群で、他の3群に比し抑制されている傾向が見られた。よってBID遺伝子/IFN-α併用療法で、アポトーシス誘導抑制を減少させることにより、抗腫瘍効果を発現する機序が考えられた。我々は以前、in vitroに於けるBID遺伝子/IFN-α併用療法でアポトーシスが誘導されることを報告している (Tsuno T, et al. 2012)が、今回のin vivoでの結果も、以前のin vitroでの結果と矛盾しないと考えられた。以上のように、BID遺伝子/IFN-α併用療法はin vivoでも抗腫瘍効果が期待できると考えられた。
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