研究課題
近年,ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)やRI内用療法などの内部療法が注目を集めている。内部療法では,ガン細胞の内部や近傍から生じる放射線により腫瘍を治療するため,その治療効果は,同じ吸収線量でも外部療法とは異なると予想される。本研究では,細胞核などミクロレベルで見た吸収線量の不均一性が内部療法と外部療法で異なることに着目し,その違いから両療法の生物学的な効果比(RBE)を理論的に決定することを最終目的とする。平成28年度は,昨年度までに開発したミクロレベルで見た吸収線量を指標とする細胞生存率評価モデルDSMKを改良し,薬剤の細胞部位間及び細胞間での不均一性を考慮可能とした。また,改良したモデルを用いて過去に実施された動物実験(腫瘍細胞を植え付けたマウスに2種類のBNCT薬剤を投与して中性子を照射し,腫瘍細胞の生存率を測定した結果, Masunaga et al. 2014)を再現し,薬剤の違いによる治療効果の違いが,その細胞部位間の不均一性に起因することを定量的に明らかにした。さらに,改良したモデルを用いた解析により,動物実験で薬剤濃度に比例して治療効果が上がらない理由は,薬剤濃度の細胞間での分散が大きくなり,十分に薬剤を取り込まなかった一部の細胞が生き残ってしまうためであることが示唆された。また,BNCTやRI内用療法の放射線場を再現する機能を粒子・重イオン輸送計算コードPHITSに組み,いくつかの事例に対してテスト計算を実施した。今後は,改良したDSMKとPHITSを組み合わせ,BNCTやRI内用療法の治療計画システムを開発する予定である。
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